(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
村上春樹さん。代表作『ノルウェイの森』をはじめ、数々の名小説を創作し続けてきた、名実ともに現代日本小説家のトップランナー。
本作は、村上春樹さんが「走る」というテーマを語る中、小説家として姿、創作への想い、そして、はじめて自分自身について綴ったものとなります。
村上春樹さんは、昨日の自分をわずかにでも乗り越え続けることという点において、走ることも、小説を書くことも同様であると言います。
上記のように、本書では「走る」ことが村上春樹さんの人生や小説家としてのあり方へ多大な影響を与えたのを、メタファーを用いながら節々に語られています(ちなみに、村上春樹さんは自身を凡庸を称しつつ、フルマラソンを約3時間半で走られるので、並々ならぬ走り手です。初心者で約6時間、中級者で4時間半程度。4時間を切れば、一般人の中では相当速い方)。
また、創作活動も、マラソンと同様に一歩一歩進み続けた先に結果へ辿り着けると言います。
「生まれつき才能に恵まれ、何もしなくても発想や文章が自然の泉から出るような小説家もいるが、自分はそうでは無い」と筆者は言います。だからこそ、身体を酷使するような努力をしながら、雨垂れ意思を穿つように、創作活動と向き合うしか無かったと。
しかし、その継続の先、創作力や効率も上がり、若い頃から才能に頼り努力が少なかった小説家よりも、人生でより多くの作品を生み出すことに繋がったと振り返っています(なので、村上春樹さんから見ても、シェイクスピアのような世界の歴史に名を刻む文豪は別格だと)。
本作でその他に印象深かった内容としては、小説家という頭脳労働の一線で活躍する村上春樹さんが、体力の重要性を強調されていたことです。
村上春樹さんは言います、小説家にとって重要なのは才能、しかし次点では集中力と持続力。そして、執筆は肉体労働であると述べ、頭脳だけでは一冊を書き上げられないと。まさに、前職の海外の農業ベンチャーの経験から得られた大きな教訓の一つが「心技体、その全てを鍛える重要性(必要性)」でした。
世に溢れるビジネス書の中で、「心(人間性)」や「技(スキル・センス)」の重要性を説く書籍は数あれど、同じ重要感・切迫感で「体(活動可能量)」を言及するものは、ほとんど見たことがありません。その中で、村上春樹さんという超一流の方が、心技体の全てが重要だと語られていることには、グッとくるものがあります(なお、他にしいて思い浮かぶのは、柳井正さんの『経営者になるノート』くらいで…)。
本書も、前回の『人生生涯小僧のこころ』に続き、五常・アンド・カンパニーの慎泰俊さんが、「走る」というテーマで紹介していた書籍となります。
塩沼亮潤さんも、村上春樹さんも、「少なくとも最後まで歩かなかった」。
この言葉の深さが、改めて心に残る一冊でした。
P.S.
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