(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
答えのない不確実な世界で、答えを創るヒントがここに。
昨今、「1万時間の法則」や「グリット」等、ビジネスでも、スポーツでも、早期より狭い分野に絞ってフォーカスすること(超専門家化)が、望ましいという話を耳にします。
そんな状況に一石を投じたのが、本作となります。
副題にもある通り、知識の「幅(レンジ)」が強力な武器になると。
その実は、アナロジー思考(水平思考)が、この不確実で意地悪な世界でも答えを創る鍵である、と述べた一冊でした。
アナロジー思考。つまり、類推力。
それ自体をテーマにした、細谷功さんの一冊でアナロジー思考とは、”複雑な事象に潜む本質的な構造を見抜き、それを別の分野に応用すること”だと。
不確実性、複雑性が増した現代。正解など無いその世界の中で生き残るには、新しい答えを創る必要性が増しています。正解を導くロジカルシンキングでは限界がある中でも、突破口となりうるのが、このアナロジー思考であり、幅(レンジ)、と本作の筆者も主張します。
前述の細谷さんの本で、アナロジー思考の発想力の要素には2つあると言います。1つは「それらをいま発想の対象としているものに結びつけること」。そしてもう1つが「多様な経験や知識を持っていること」。つまり、料理をする技術、そして、そもそもの料理をする材料の量質だと。
この後者が、本作の筆者が述べている幅(レンジ)ということかと思います。では、レンジを広げるためにはどうすればよいか。それは「学習」と「実験」だと言います。
かのビル・ゲイツさんも絶賛の本作(余談ですが、2015年時点で、1万4000冊以上の蔵書がある彼の知識のレンジはどうなっているのだろうか…)。
我が意を得たりという内容でした。個人的な経験としても、読んだ書籍が200冊、500冊、1,000冊を越えるごとに、見える世界・創れる解に変化があった実感があります。
この筆者は、自らの主張の正当性を増すために、「スペシャリスト」を揶揄し、「ゼネラリスト」を推奨しています。おそらく、そのどちらが良いということではなく、どちらのやり方にしても相応の能力と努力は必要。
しかしながらも、「スペシャリスト」や「論理的思考」が持て囃される中で、「ゼネラリスト」や「アナロジー思考」での戦い方もあることを示した点でも、本作は十分に価値があるように思えます。
現代においては、知的労働力・情報の量質が、組織における価値源泉となることは、揺るぎようの無い事実。その中で、いかに個人・チームの知識の幅(レンジ)を生み出すか。これが、今後の大きな競争優位性となる鍵になることも示している気がしてなりません(そして、それは農業のようなレガシーな産業であれば尚更)。
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