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週末読書メモ58. 『スティーブ・ジョブズ』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

未来を創った、今世紀を代表する起業家・経営者を描き切った大作。


1900年代後半から2000年代初頭にかけ、世界で最も影響を与えたといっても過言ではない実業家、スティーブ・ジョブズ。

彼が唯一全面協力した本人公認の自評伝が本書となります。

内容は、彼がいかに生まれ、育ったことから、アップルの創設から偉大な製品の誕生秘話、そして、癌との闘病、引退・死までもが。

圧巻。マネジメント・イノベーション・リーダーシップ本としても、一つのドキュメンターリーとしても大作。

特に本書の凄みは、スティーブ・ジョブズという人間の思考の内側、そして、ライトサイドとダークサイドの両方を公開していることです。

「僕は子どものころ、自分は文系だと思っていたのに、エレクトロニクスが好きになってしまった。その後、『文系と理系の交差点に立てる人にこそ大きな価値がある』と、僕のヒーローのひとり、ポラロイド社のエドウィン・ランドが語った話を読んで、そういう人間になろうと思ったんだ」

僕にとって、インドへ行ったときより米国に戻ったときのほうが文化的ショックが大きかった。インドの田舎にいる人々は僕らのように知力で生きているのではなく、直感で生きている。そして、彼らの直感は、ダントツで世界一というほどに発達している。直感はとってもパワフルなんだ。僕は、知力よりもパワフルだと思う。この認識は、僕の仕事に大きな影響を与えてきた。
(中略)直感の力、体験にもとづく智恵の力だ。

彼の思考の強みは様々ある上で、大きく印象に残った部分は2点。

1つは、文系と理系、つまり、常に人間性と技術の交差点に立っていた点。

もう1つは、創造性と共に直感を重要視すること、そのために、修練と規律が必要だとわかっていた点です。

リーダーには、全体像をうまく把握してイノベーションを進めるタイプと、細やかな点を追求して進めるタイプがいる。ジョブズは両方を追求する ー 過激なほどに。そして、さまざな業界を根底から変える製品を30年にわたって次々と生み出したのだ。
・アップルⅡ
・マッキントッシュ
・『トイ・ストーリー』をはじめとするピクサーの人気映画
・アップルストア
・iPod
・iTunesストア
・iPhone
・アップストア
・iPad
・iCloud
・アップル(社)

化け物過ぎて笑。

そのどれか一つだけでも世界に名が残るものを、これほども創り上げたジョブズ。その思考の土台には、人間性と技術の交差点に立ったこと、そして、直感の重要性を理解していたことがあったようです。

また、別のジョブズの言葉として、”芸術的なものを生み出すには修練と規律が必要だと”。ジョブズに関して、「努力」にまつわるエピソードは少ないものの、人並みならぬ修練がそこにはあったと。


そして、本書の凄みのもう片方は、偉大な起業家・経営者のライトサイドとダークサイドの両方を見せたことです。

スティーブ・ジョブズの性格はその製品に反映されている。1984年の初代マッキントッシュからiPadにいたるまで、ハードウェアとソフトウェアをエンドツーエンドで統合するのはアップルの哲学の中核であるように、ジョブズも、その個性、情熱、完璧主義、悪鬼性、願望、芸術性、中傷、強迫的コントロールといった要素がすべて、ビジネスに対するアプローチにも、そこから生まれる革新的な製品にもしっかりと織り込まれている。

その個性、情熱、完璧主義、悪鬼性、願望、芸術性、中傷、強迫的コントロールといった要素がすべて、ビジネスに対するアプローチにも、そこから生まれる革新的な製品にもしっかりと織り込まれている、と。

彼は、決して、決して善人と言える人物ではありませんでした(いや、なることができなかった)。

人を傷つけること、蔑むこと、貶めることのエピソードは枚挙にいとまがなく。相手の感情を理解する力は傑出していた一方で、相手の感情に寄り添うこと・共感することができなかったと言われます。

それの背景には、当人の仕事の進め方や人間性に加えて、自己愛性や強迫性といった人格障害(パーソナリティ障害)と思われる部分もあり(おそらく、その原因には幼少期に実の親から捨てられたことが大きく)。

ドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』で描いていましたが、人間はなんと複雑で倒錯的な存在なのだろうか…そんな真理が、ジョブズという人間の人生から、心に重く残ります(勿論、ジョブズは極端ではあるけれど)。


実務本としても、物語小説としても傑作の一冊。

内容が多岐に渡ることもあり、読み手によって、得られること・印象に残ることがきっと様々だと思われます。

前回のピクサー以上に、ジョブズを中心に、様々な人物達が大きな歴史を紡いでいったのがアップルであり、20~21世紀のデジタル革命でした。

本書の様々なエッセンスを胸に刻み、自分が関わる組織・業界・世界の大河の一滴として、ベスト尽くし続けていこう。


【本の抜粋】
「僕は子どものころ、自分は文系だと思っていたのに、エレクトロニクスが好きになってしまった。その後、『文系と理系の交差点に立てる人にこそ大きな価値がある』と、僕のヒーローのひとり、ポラロイド社のエドウィン・ランドが語った話を読んで、そういう人間になろうと思ったんだ」

僕にとって、インドへ行ったときより米国に戻ったときのほうが文化的ショックが大きかった。インドの田舎にいる人々は僕らのように知力で生きているのではなく、直感で生きている。そして、彼らの直感は、ダントツで世界一というほどに発達している。直感はとってもパワフルなんだ。僕は、知力よりもパワフルだと思う。この認識は、僕の仕事に大きな影響を与えてきた。
(中略)直感の力、体験にもとづく智恵の力だ。

マークラは、マーケティングや営業をジョブズに教え込んだ。その点はジョブズも認めている。
「マイクには本当にお世話になった。彼の価値観は僕とよく似ていたよ。その彼が強調していたのは、金儲けを目的に会社を興してはならないという点だ。真に目標とすべきは、自分が信じるなにかを生み出すこと、長続きする会社を作ることだというんだ」
マークラはこの原理を1ページにまとめた。「アップルのマーケティング哲学」と題されたそのペーパーには、3つのポイントが書かれていた。
1番目は〈共感〉だった ー 「アップルは、他の企業よりも顧客のニーズを深く理解する」。顧客の想いに寄りそうのだ。
2番目は〈フォーカス〉 ー 「やると決めたことを上手におこなうためには、重要度の低い物事はすべて切らなければならない」
3番目に挙げられた同じく重要な原理は、〈印象〉だった。わかりにくいかもしれないが、これは。会社や製品が発するさまざまな信号がその評価を形作ることを指している。

「つまり、人類が成し遂げてきた最高のものに触れ、それを自分の課題に取り込むということです。ピカソも、『優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む』と言っています。我々は、偉大なアイデアをどん欲に盗んできました」
(中略)着想と創造のあいだには闇がある。新しいアイデアだけでイノベーションが生まれるわけでない。そのアイデアを現実とする行為にも等しく重要なのだ。

「人間は30歳を超えると思考パターンが型にはまり、創造性が落ちる」と指摘したことがある。
「ほとんどの人は、レコードの溝のようにこのパターンにとらわれてしまい、そこから出られなくなってしまいます」
「もちろん、生まれながらに好奇心が強く、いくつになっても子どものように人生に感動する人もいますが、まれです」
45歳のジョブズは、自分の溝から飛び出そうとしていた。
デジタル革命の次なる段階を予見し、推進したのはほかの誰でもなくジョブズだったのは、理由がいくつかある。
・まず、彼が常に人間性と技術の交差点に立っていた点が挙げられる。
・完璧主義者であるために、ハードウェアからソフトウェア、コンテンツ、マーケティングにいたるまで、製品のあらゆる側面を一体化しなければ気がすまなかった。
・ジョブズはシンプルを追求する。
・ジョブズはこの新しいビジョンに「全財産を賭ける」つもりだった。

技術を生み出すには直感と創造性が必要であることも理解していて、なおかつ、芸術的なものを生み出すには修練と規律が必要だとわかっている人は、僕以外、そう何人もいないと思うよ。

スティーブ・ジョブズの性格はその製品に反映されている。1984年の初代マッキントッシュからiPadにいたるまで、ハードウェアとソフトウェアをエンドツーエンドで統合するのはアップルの哲学の中核であるように、ジョブズも、その個性、情熱、完璧主義、悪鬼性、願望、芸術性、中傷、強迫的コントロールといった要素がすべて、ビジネスに対するアプローチにも、そこから生まれる革新的な製品にもしっかりと織り込まれている。

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