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週末読書メモ38. 『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「進化パターンの百科事典」。帯にある濱口秀司さんの書評の通りの一冊。


デザイン学、建築学、言語学、生物学と幅広い分野に精通する筆者(幅広い分野に知がまたがっているからこそ、この本が書けたようにも感じます)。

筆者が提唱する「進化思考」。

それは、"生物の進化と同じく「変異と適応」を繰り返すことで、誰もが創造性を諦めることなく発揮できるようになる思考法"、と述べられています。

正直、利用難易度は極めて高いです笑。ですが、創造性を発揮するにあたって、ヒントが散りばめられています。


本書の魅力は、大きく2つ。

1つは、進化と思考の構造を説明していること。

もう1つは、進化の手段となる「変異と適応」を体系化していること。


前者については、突き詰めると、変異と適応の両方を行き来した先に、進化・創造があることが、解説されています。

長い時間を生き残るものは、それが偶然の産物であっても、製作者の想定通りであっても、変異と適応が十分に往復した先には、まるで最初からさまざまな目的にかなうものを狙ったように、最適化された姿に収斂する。
(中略)あらゆる発想は、自然発生する進化のように、世界に出現する。物事に秘められた声にならない声を聴くように、目に見えない関係を読み解き、適応の方向を見定めること。時間・空間上の関係に宿る、秘められた方向性を感じ取る力は、新たな創造を未来の世界に適応させるための鍵となる。

まず狂おう。常識を疑って、現実を塗り替える変異の可能性を考えよう。そして愛情をもって、時間と空間に宿る適応のなかの願いを引き受けよう。それを繰り返し、創造の螺旋を登り、生き残るコンセプトに磨き上げよう。コンセプトに宿る祈りを共有する仲間を見つけて、領域を越えよう。その先に希望ある物語を描き、未来を具現化させ、世界に衝撃を与えよう。

この捉え方は、昨今の左脳的な論理思考の限界を述べた『右脳思考(内田和成)』や『直感と論理をつなぐ思考法(佐宗邦威)』に通じるものがあるように感じます。

しいていうと、右脳と左脳、変異と適応を、”十分すぎる”程に往復する必要性が強調されている点に、進化思考の肝があるように感じます。


そして、後者の進化の体系化については、ここまでビジネス書の中で書かれるのを見たことが無いであり、必見です。

変異 HOW
1 変量 ー 極端な量を想像してみよう
2 擬態 ー 欲しい状況を真似してみよう
3 欠失 ー 標準装備を減らしてみよう
4 増殖 ー 常識よりも増やしてみよう
5 転移 ー 新しい場所を探してみよう
6 交換 ー 違うものに入れ替えてみよう
7 分離 ー 別々の要素に分けてみよう
8 逆転 ー 真逆の状況を考えてみよう
9 融合 ー 意外な物と組み合わせてみよう

適応 WHY
1 解剖 ー 内側の構造と意味を知ろう
2 系統 ー 過去の系譜を引き受けよう
3 生態 ー 外部に繋がる関係を観よう
4 予測 ー 未来予測を希望に繋げよう

これは、チェックリストとして、繰り返し見返したい。

変異の9つは、かの有名なオズボーンのチェックリストのように、アイデアを捻り出すためのツールになり得るかと思います。

そして、適応の4つは、言われてみると当たり前ですが、とても良い。

ミクロ(解剖)とマクロ(生態)、過去(系統)と未来(予測)の4点から物事を捉えようとするアプローチとなります。

本書の結論に、全てを統合した「創造性の五原則」が記されていました。

創造性の五原則
変異 ー 明確で非常識な挑戦を繰り返したか
解剖 ー シンプルで無駄がなく揺るぎないか
系統 ー 過去からの願いを引き受けているか
生態 ー 人や自然の間に美しい関係を築くか
予測 ー 現在を触発し未来に希望を与えるか

冒頭、進化論をはじめとする生物学から入っているため、異質な印象を与えるものの、最終的に導かれる結論は、至極王道。

ということは、結局、どれほどのレベルで実現できるかだなあ(上記の変異(HOW)の9つとかはまさにで、言うは易し行う難し)。

きっと、進化も、成長も、膨大な試みを積み重ねるしかなく。

しかしながら、正しい方向で努力するための強力な"道具"と積み重ねの先に創造があるという"希望"を得られる、そんな一冊でした。

変異、解剖、系統、生態、そして、予測。頭にこの枠組みを持ち続けよう。


【本の抜粋】
では創造とは何なのか。それはとても不思議な現象だ。
(中略)そう考えていたら、ふと思いついた。自然界には、創造によく似た現象がひとつだけ存在する。生物の進化だ。

モノを機能させるためには、それを利用する人との関係が深く考察されていたり、その周辺に対する知識が不可欠だ。
創造のプロセスには、制約を読み解き、関係を把握する力が必ず問われる。この力は創造性と密接に関わっている。訪れる場所が変われば着る服も変わるように、その善し悪しはを決めるのはモノ自体ではなく、むしろ周囲の関係性のほうだ。

進化論の構造は単純明快で、四つの現象を前提としている。
1 変異によるエラー:生物は、遺伝するときに個体の変異を繰り返す
2 自然選択と適応:自然のふるいによって、適応性の高い個体が生き残りやすい
3 形態の変化:世代を繰り返すと、細部まで適応した形態に行き着く
4 種の分化:住む場所や生存戦略の違いが発生すると、種が分化していく

変異の数を生み、偶発性を高めよう。そして先鋭的に突き抜けよう。
進化は、偶然だ。無数の変異的挑戦による、壮大な結果論なのだ。
長い時間を生き残るものは、それが偶然の産物であっても、製作者の想定通りであっても、変異と適応が十分に往復した先には、まるで最初からさまざまな目的にかなうものを狙ったように、最適化された姿に収斂する。
(中略)あらゆる発想は、自然発生する進化のように、世界に出現する。物事に秘められた声にならない声を聴くように、目に見えない関係を読み解き、適応の方向を見定めること。時間・空間上の関係に宿る、秘められた方向性を感じ取る力は、新たな創造を未来の世界に適応させるための鍵となる。

創造性の五原則
変異 ー 明確で非常識な挑戦を繰り返したか
解剖 ー シンプルで無駄がなく揺るぎないか
系統 ー 過去からの願いを引き受けているか
生態 ー 人や自然の間に美しい関係を築くか
予測 ー 現在を触発し未来に希望を与えるか

まず狂おう。常識を疑って、現実を塗り替える変異の可能性を考えよう。そして愛情をもって、時間と空間に宿る適応のなかの願いを引き受けよう。それを繰り返し、創造の螺旋を登り、生き残るコンセプトに磨き上げよう。コンセプトに宿る祈りを共有する仲間を見つけて、領域を越えよう。その先に希望ある物語を描き、未来を具現化させ、世界に衝撃を与えよう。

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