転石苔を生ぜず、 会社を生かすためには
とにかく仕組化 - 人の上に立ち続けるための思考法
著者:安藤 広大
株式会社識学代表取締役社長。1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。2019年、創業からわずか3年11ヶ月で東証マザーズ上場を果たす(現在はグロース市場に移行)。2023年5月現在で、約3500社以上の導入実績があり、注目を集めている。
序文
この言葉は、麻薬だ。
キャッチコピーに惹かれ即買い。
これ本当にそうなんですよね。
その人がいないと職場が回らないとか、職場でオンリーワンの人材になるとか。
そこに優越感に浸っているようでは本当の意味で会社に必要な人材に成れているとは言えない。
そうならない為に必要なことは、
とにかく組織化・マニュアル化を徹底的に行い、誰もが同じパフォーマンスを行えること。
没個性という話ではなく、能力差に関係なく誰もが一定水準までの働きができるようにする。
相手陣地に切り込んだ駒が「成る」ように、誰もが会社の求める金に成れる仕組みが必要なのだ。
仕組みがないチームのたった一つの特徴
仕組みがない組織に共通している特徴。
それは、期限を守ることが疎かになっている、ということです。
仕事の中で最も憂鬱でもある報連相。これは期限を設ける体制があって初めて成り立つ業務と言えます。
期限があることで組織はやっと仕組化のスタートラインに立つ事が出来るのです。
そして、期限を設けることは社内のコミュニケーションの向上にも役立ちます。
各々が責任感を持つようになり、その責任のもと、定められた期限に対しての進捗で他者と連携するようになる。
そこで培われる土俵があってはじめて仕組みを作っていけるのです。
属人化ほど怖いものはない
仕組化の反対である属人化。
属人化とは、その人にしかできない業務が存在してしまっているということです。
冒頭でも述べたように、「あなたがいないと困る」は会社にとって猛毒です。
人は放任していると属人化していく生き物です。
“私”がいることの意義や価値を追い求め、
“他”が追随できぬようノウハウを握り、そういった状況を作ることで自身が得をするようにもっていきます。
これは企業がうまく仕組化出来ていないことで起こる最も悪い弊害です。
属人化することで企業は個人に依存せざるを得なくなり、悪質な隠蔽へと繋がっていく例が多々あります。
経営者は社内のカリスマと闘い、仕組化に勇気をもって挑むことをすぐにでも始めなければなりません。
メリットがあるから人が繋がる
会社には幾つかの部署が存在しているはずです。
それぞれの部署が掲げられた目標に向かって日々研鑽する、これは当たり前の風景だと思います。
経営者として望むこと、それは部署を横断して会社の目標に走ってくれること。
これは個人の考え方・精神論が関与してくるため中々難しいと思います。
とはいえ、経営者はそういった人材を増やさなければこの競争社会で打ち勝つことは出来ません。
この解決の糸口も仕組化にあると言えます。
「自分の会社のことはすべて把握すべき」
「他部署とも定期的に交流を」
「愛社精神をもて」
このような精神論は全く無意味です。
人の行動原理には必ずメリットが存在していなければなりません。
例えば、他部署の製品を紹介した際にはポイントが入るなど、目に見える評価が用意されて初めて人は会社のために動きます。
経営者が何を評価したいか、そこにご褒美をおいて仕組みを作る。
これもいい会社作りに必要な工程なのです。
明確な恐怖
人間にとって恐怖は必要な要素です。
社会においての恐怖、一般的には罰に近いものだと思いますが、これをはき違えて使っている人が多くいます。
かくゆう私も間違って使用しがちです。
間違った恐怖とは、逃げ道のない抑圧的なものをいいます。
回避方法の分からない恐怖に直面した時何が起こるか。
とにかく上司の機嫌を悪くしないことにフォーカスが置かれ、ゴマすりや忖度が横行してしまいます。
組織に恐怖は必要ですが、そこに明確なルールと正しい逃げ道が用意されていることが必要なのです。
ルール化されていないことで罰を与えてはいけません。
間違いが正しい方向で改善されていくよう、明確化されたルールがあるべきです。
前へ、前へと進め
この会社に居続けたい。
この感情を引き出すことがどれほど難しいか。
仕組を作ることで、会社の指針や評価、質の改善を行う。
これが社員の満足度へ変換される。
しかしながら、これだけでは会社として選ばれる存在になったとは言えません。
会社も生き物です。
そのすべてに目標があり、そこに共感できる又は納得できてはじめて人は継続を望みます。
いわゆる社是というものです。
そしてこの幹がどのように伸びているかが大事なのです。
これを本書では「進行感」と呼んでいます。
会社が勢いをもって成長していく過程を喜ばない人間はいません。
むしろ目先のボーナスや社員旅行、上司ガチャといった目に見える部分で本当に人を惹きつけることは出来ません。
徹底的な仕組化のもと、会社も個人も成長を実感できる「進行感」を身に着けることが求められているのです。
跋文
仕組を作ることは、仕事の中で非常に難しい分野だと私は思っています。
それは今までの体制を壊すことであり、社員同士の亀裂や波紋を呼ぶ可能性があるからです。
しかし、会社は時代に即して常に脱皮をし新たなフィールドへ羽ばたき続けないといけません。
先代はよく社会を川、時代を激流と表現していました。
私達は常に時代という激流の中を必死に藻掻き続けなければならない。
下流に押し流され苔の生えるような会社は生存できないのが、この社会という川なのです。
会社も人も。
慣れや依存という麻薬に溺れぬよう、強い心をもって日々精進していきたいものです。