「やる気」はどこから来るのか
考え方は感じ方に支えられている
2004年に中国の北京電影学院の客員教授になってから、映画の研究を始めざるを得ない状況に追い込まれました。
その時に、最初に手をつけたのが、キャラクター解析です。
映画って、俳優たちが演技をして進行していくものですが、ではこの俳優たちは何をしているんだろうという根本的なところから僕は考えることにしたのです。
まず、俳優は演技をします。この三角形でいうと右下の行動というところに当てはまることになります。
映画を観ていて、「どうしてこの人はこんなことをするんだろう?」と思ったことありませんか?
人の行動には、その人の考え方が反映されています。そして、その考え方は感じ方に支えられている
このシンプルな事実から出発して、心理学や脳科学などの一般書を読み漁ったり、試行錯誤繰り返していく過程で出会ったのが、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士の著作である「ファスト&スロ−」でした。
そこで説明されていた、二重システム理論(二重過程理論)は、僕が学んできた身体感覚を説明するのにも役立つとすぐに気づきました。
人の行動の9割以上は、直感→行動という流れをとり、直感→推論→行動という流れをとるのは1割以下といわれています。
基本的に人間はSystem1だけで判断して生きていると言っても過言ではありません。そして推論が行われるにしても、直感のフィルターを通ったものしか推論できないので、知識を蓄え、思考力を磨いたとしても、直感の質を高めなければ、大きな成長は期待できないのです。
最近、学校の勉強を、AIを使って、子供たちの傾向を探り、その傾向にそった学習カリキュラムを作ることで、「教育の生産性」を上げるという試みが始まっています
僕はそれ自体に関しては、どんどん研究開発すべきだと思っています。勉強はSystem2の働きである、「論理的な思考力」を高めるために行われるものです。論理的な思考力は人間として絶対に身につけなければならない能力だと思います。
しかし、教育の生産性をあげるためには、子供たちのやる気=学習意欲が絶対不可欠だという視座で捉えている人が極端に少ないように感じています。
上の図でも示した通り、まず、直感が「勉強したい!」「勉強って楽しい!面白い!」とならない限り、いくら効率の高い学習プログラムを用意していても、「生産性」は高まらないのではないでしょうか?
これは、学校の勉強だけに限られた話ではありません。仕事も人間関係も論理的で合理的な帰結に至ることのことの方が少ないのではないでしょうか。
「やる気」は感覚なので、System1から生まれます
次回は、身体教育と二重システム理論に関する僕の私見を書いてみたいと思います。
私見なので、参考程度にしてくださいね(笑)