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2019年9月の記事一覧
独りでは何もできない#20
ひとりで出来ること。考えられること。
それにはやっぱり限界があった。
雨の中を傘も差さずにそのまま海に潜っていくような日々。
ここにいたら、もしかしたらひょっこり戻ってきて
またあの笑顔で私の名前を呼んでくれる気がして。
彼のバンドメンバーに声をかけた。
もう考え尽くしてその策の中に溺れていた。
助けてほしかった。
「もしもし、瑠衣ちゃん?珍しいね、いや掛けてくるの
初めてか。なんかあった?
病の理由と涙の理由#19
身長、体重に始まり、レントゲン、CT、脳波測定、
あれやこれやと検査は進んでいった。
合間をみてはピアノレッスンも進めていた。
高校の時の音楽教諭にお願いしていた。
声を聞くのも数年ぶりで少し抜けているような
所がある、なんだか憎めない教師だったのを覚えている。
義務的に教わるのも性に合わないので、
手元に楽譜があった、とあるゲームの音楽から
抜粋して教わることにした。
先生も音大卒なこともあり、
紺色のダッフルコート#18
「ソウマか、おおきくなったな。」
「大きくもなるよ。もう20の齢になるんだから。」
「それもそうか。あれから20年か。」
「ここじゃ迷惑がかかるよ。父さんこそ、いくつなんだよ。」
「父さんか。良い響きだ。生まれて初めてってこんな歳になっても
あるもんなんだな。」
僕等はそんな話をしながら、カフェへと足を運ばせた。
約20年という歳月を取り戻すかのように。
「海外まで来て、日本展開されて
Moon Sing Girl #14
また歌ってる!!
後ろから声がする。シンラさんだ。
TPOをこの人は知らないのだろうか。
育ちが良さそうなのに。
「はい、歌ってましたけど、なにか?」
「なんでそんなあからさまいつも冷たいわけ?
しかも俺だけ、、、。」
「冷たくしておかないと調子に乗りそうなタイプだから?」
「理由がごもっともすぎて、、ね、、。」
夜風がなびく間、暫しの沈黙があった。
刀を斬り込んできたのはシンラさんだ
ワインと青とサラダ#13
彼の部屋に入った時、人の気配というか
生活感のようなものが欠如しているように感じた。
覗かせてもらうと、ほぼ未使用のIHキッチンヒーター
冷蔵庫の中はワインとその仲間たち。
薄いブルーのライトがつくと
黒を基調としたガラステーブル
すぐそばには白のシックな二人掛けのソファー
そのしたにふわっとした白の絨毯。
他には特段何にもない。
「え、、これは白い普通のライトは点かない?」
「う