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ねぇ、忘れないでよ。#31
どういうこと?
なんで?
そればかりが繰り返す。
幼子のように。
三人で彼の遺影を前にしていた。
シンラさんは我慢することも
できないようで声をあげて泣いていた。
トキオさんは静かに肩を震わせていた。
私は涙も出なかった。
怒りと哀しみが綯い交ぜになっていた。
なんで一言も言ってくれなかったの。
言ってくれたにしてもその意見に
賛同できなかったと思う。
想真くんが考えていたことは最後の最
生きて、生きて、奏でた#30
「もしもし、母さん?うん、想真。げんきにやってるよ。母さんはどう?」
「元気そうな声ね。活躍をメディアとかで聞いているもの、そうよね。母さんも元気よ。父さんに会ったんでしょう?色々と驚かせてごめんね。話すタイミング探してるうちに想真どんどん大きくなっていくから、隠すつもりはなかったんだけど、結果的にそうなっちゃったね。」
「そんなこといいよ。母さんはずっと僕の母さんだよ。これはなにがあっても変
みえないチカラ#27
「ソウマ、話がある。」
あの日のように
レコーディングを一通り終えたところで
携帯が鳴った。
「俺たちの家の代々の先祖、そして俺もソウマも
同じような状況で苦しんできた。
調べに調べ尽くした。
それには見たことも聞いたこともない
病名がつきそうだ。」
「病気?これは病気だったの?一体どんな?」
「他者記憶介入病だ。名づけるならそんなところだ。」
「サイコメトリーみたいな感じ?
失うまで気付けなかったこと#26
守りたいものが出来れば出来る程に。
僕等は強くもなれるし、弱くもなる。
僕にとっての未来への約束。それはこのメンバーで奏でる瞬間、
作詞作曲の時間、レコーディングの時間、メンバーは
言わずもがな、そして何よりルイの存在。
シンラの笑顔にどれだけ救われていたんだろう。
世界で一番自分が不幸だと思い込んでいた。
きっとどこかいつもそんな顔して街を歩いていた。
でもいつかのシンラが言ってたように僕等は
酸いも甘いもみんながいたから#25
怖い。すごく怖い。
心が震える。凍る。
シンラさんの今後。私たちの今後。
どうなっていくのか。予想が出来ない。
ソウマ君が戻ってきたことは無論喜ぶべきことなんだと思う。
だけどそれはシンラさんの窮地が引き換えで。
だから素直に喜べないのが実情だったりして。
ギターを笑顔で描き鳴らす。
歌うことに全力で。
レコーディングに他の追随も許さない。
いつだってどんな時だって引っ張ってくれていた。
深夜で
馬鹿な私を赦して#24
走り出したら止まらなかった。
某SNSにファンがアップしてくれた動画で火がつき
世界各地からラジオ、ライブ、雑誌の撮影、インタビュー、
といったオファーの嵐。
スケジュールに空白がなくなった。
だけど三人とも浮かれている様子はどこにもなかった。むしろまだまだ足りない。まだまだ未来を見ていた。
眠る時間はほぼなく、移動中に
ほんの少し仮眠。それを断続的に繰り返していて、なんとか体をキープしていた
想真くんに贈る言葉#23
「ソウマからメールが。」
トキオさんの
その声で休憩を
とっていた私達は
胸を弾ませた。
なんで俺にじゃなく、いつもトキオなんだー!
と嬉々として
大声をだすシンラさん。
そんなの私だって
思うよ。
なんで私じゃないの?って。
でもトキオさんに
宛てるってことは
結局3人に
向けて送られて
きているということ。
誰に届いたじゃなくて
ここに届いたことが
すごく重要で。
内容
瑠衣の為になんて笑われるかな#22
ここに来た理由はもうひとつあった。
音楽療法について学ぶことだ。
だけどそんなことどうでもよくなった。
待ってる人がいる。こんな僕を待ってる皆がいる。
それに僕は僕たちはもうきっと誰かを癒していたと思うから。
Moon Raver の理念というか訓辞のようなものがある。
‘‘心の叫びに寄り添って‘‘
これの言葉に添うような音楽をどんな風になってもやっていこう。
三人でそう決めた。誰か
独りでは何もできない#20
ひとりで出来ること。考えられること。
それにはやっぱり限界があった。
雨の中を傘も差さずにそのまま海に潜っていくような日々。
ここにいたら、もしかしたらひょっこり戻ってきて
またあの笑顔で私の名前を呼んでくれる気がして。
彼のバンドメンバーに声をかけた。
もう考え尽くしてその策の中に溺れていた。
助けてほしかった。
「もしもし、瑠衣ちゃん?珍しいね、いや掛けてくるの
初めてか。なんかあった?
病の理由と涙の理由#19
身長、体重に始まり、レントゲン、CT、脳波測定、
あれやこれやと検査は進んでいった。
合間をみてはピアノレッスンも進めていた。
高校の時の音楽教諭にお願いしていた。
声を聞くのも数年ぶりで少し抜けているような
所がある、なんだか憎めない教師だったのを覚えている。
義務的に教わるのも性に合わないので、
手元に楽譜があった、とあるゲームの音楽から
抜粋して教わることにした。
先生も音大卒なこともあり、
紺色のダッフルコート#18
「ソウマか、おおきくなったな。」
「大きくもなるよ。もう20の齢になるんだから。」
「それもそうか。あれから20年か。」
「ここじゃ迷惑がかかるよ。父さんこそ、いくつなんだよ。」
「父さんか。良い響きだ。生まれて初めてってこんな歳になっても
あるもんなんだな。」
僕等はそんな話をしながら、カフェへと足を運ばせた。
約20年という歳月を取り戻すかのように。
「海外まで来て、日本展開されて