私たちは聞いてもらう心地よさを知りません
「LISTEN」聞く、耳を傾ける
「LISTEN」を日本語で調べてみると「聞く」と「聴く」の二つの漢字がでてきます。
「聞く」・・・音や声を耳に感じ認める。
「聴く」・・・聞こえるものの内容を理解しようと思って聞く意である。
『広辞苑』(岩波書店)より
少し意味合いが違うけれど、広い意味をもつ「聞く」を使う方がスタンダードで使われるようです。
「聞くこと」は後回し。
私たちは学校教育を受ける中で、「相手が話しているときは黙って聞きましょう」と教わります。
それはおそらく「相手が話していることを理解しましょう」という意味であったと思います。
そう教わったにも関わらず、私たちは話している相手の言葉の意味を受け取ることがあまり上手ではありません。
なぜなら、学校では「聞くこと」よりも「意見を言うこと」の方が重要視されているから。
学校ではたくさん発表すると褒められ、個々のコミュニティでは主張しないと欲するものが手に入らないという世界に生きています。
その年齢なりの表現で言葉を使い、伝えたいことを伝えようとしても、受け取る側に聞いてもらい、理解されなければ伝わりません。
いつしか、伝えることを諦めてしまうのです。
私たちは聞いてもらう心地よさを知りません
この本では、他人の話は、面倒で退屈なものです。 と前置きがあり、
話を聞くということは、自分では考えつかない新しい知識を連れてきます。
と定義し、
どんな会話も我慢という技術は必要です。しかし、それを知っておくだけで、人生は驚くほど実り豊かになります。
と、聞く側のメリットを説明しています。
そして、聞く時の心構えのコツにも言及されています。
相手の言葉を繰り返したり、似たような言葉に言い換えたりすることで相手に共感を伝えることは不十分で、まずは相手自身に興味を持ち、
耳と心を傾けることを意識する必要があると書かれています。
某話し方セミナーで「共感を伝えるには相手の言葉を繰り返しましょう」と講師の方がお話しされていて、実際にグループワークをしてみた時に、あまり腑に落ちなかった経験があります。
それはどうしてだったのか。
この本を読んで答えが見つかったような気がしました。
きちんと時間をたっぷりかけて聞いてもらう心地よさは、安心感と満足感と相手に対する信頼感を覚えます。
心地よさから、きっと相手のことが大好きになるでしょう。
聞きたいと思っていても
でも、いつでも「聞く」ことができるわけではありません。
自分の体調、気分、状況がよくない時は、聞けません。
まずは自分を知り、整えることが大切なのではないかな。
何が好きで、何が苦手で、どんなところに行きたくて、大切しているものは何なのか。
解らない時は、人と関わることで気付けることもあると思います。
自分を知って、整えて、そうなって初めて人の話をフラットに、思い込みなく聞けるような気がします。
読み終えて
とても読み応えのある本でしたが、語り口のやわらかさが心地よく感じられました。翻訳者さんの言葉のチョイスが素敵です。
読み終わった後、知識を得たような満足感があります。
ぜひ、秋の、冬の読書におすすめします。