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3分でわかる宇宙のサイバーセキュリティ

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人工衛星に対するサイバー攻撃

人工衛星は、通信やGPSはじめ広く民生技術としても活用されていますが、使い方によっては人の生命をも奪い得る能力を秘めています。
例えば、複数の衛星が同一地点に向けて電波を発すれば巨大な電子レンジが出来上がりますし(殺人兵器になり得ます)、GPSの信号に誤りを生じさせて自動運転車の事故を発生させることも可能でしょう。
そうだとすれば、人工衛星あるいはその設備をハッキングしてテロ活動に利用される可能性は十分あります。
地球上でもサイバー攻撃の脅威について(ようやく)議論されてきていますが 、宇宙物体に対するサイバー攻撃にはどのような問題があるのでしょうか?今回は宇宙平和利用原則との関係について取り上げてみたいと思います。

サイバー攻撃の種類

サイバー攻撃といってもジャミング、スプーフィング、ハッキング等手段は様々であり、攻撃対象もコントロールシステム、ミッションパッケージ(衛星のコントロール)、ソーラーパネル、地上設備(ネットワーク、データセンター)等様々です。
それぞれの手段について、人工衛星の運用との関係でどのような脅威を生じさせるか分析することが必要でしょう。

平和利用原則との関係

宇宙条約4条は、

条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと…月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装備又は施設を使用することも、また、禁止しない。

と規定し、宇宙の平和利用原則を定めています。

条文上は、核兵器等が軌道に乗せられる場面が想定されていますが、攻撃手段そのものとの関係や、サイバー攻撃を受けた宇宙物体が大量破壊兵器に変化してしまった場合に「核兵器」等に該当するか、といった点は明らかではありません。

まず、サイバー攻撃自体は文言上は「兵器」ではないので、「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器」には当てはまりません。
また、人工衛星やその管理設備への攻撃を想定した場合、「天体」とは無関係なので、「天体上においては…禁止しない。」にも該当しないでしょう。

しかし、近時はサイバー攻撃が日米安保条約5条の「武力攻撃」に該当する可能性が示唆され(※)、「武力攻撃」に該当するサイバー攻撃それ自体が平和的利用原則に反するともいえそうです。
また、ハッキング等によって人工衛星が攻撃者のコントロール下に置かれた場合、それ自体「兵器」に該当するとも考えられ、攻撃者がサイバー攻撃によって兵器等を軌道に乗せたと構成する余地もあるように思われます。

まとめ

解釈の問題が多分に入ってきますが、いずれにしても、衛星が社会インフラとして浸透すればするほど、サイバー攻撃によって困るのは私たちユーザーです。技術的問題はもちろん、ルールづくりの問題としても検討を要する分野であることは間違いありません。

※2019年4月19日、ワシントンDCで開催された日米安全保障協議委員会で、国際法がサイバー空間に適用されること、一定の場合にはサイバー攻撃が日米安保条約第5条の「武力攻撃」を構成し得ることが確認されました。

参考:
・Research Paper「Space, the Final Frontier for Cybersecurity?」 David Livingstone and Patricia Lewis International Security Department (September 2016)

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