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精神科救急医療実録0 精神科救急医療の業務内容ってこんな感じです!

 今回は、精神科救急医療がどの様な流れになっているのか、私の実体験を踏まえながら、お伝えできればと思います。

 これから、不定期で精神科病院で働いていた頃のエピソードを伝えていきたいと考えているので、事前情報として精神科医療の現場の雰囲気を知っておいて貰えたら、楽しく読んで頂けるかも、と思い0から記事にしました。

精神科救急医療

 精神科救急医療は各都道府県の精神科病院協会に入会している精神科病院で地域に在住している方に夜間・休日(土日祝)も精神科医療を提供する仕組みです。
 ※平日17~翌9時 土曜日12~翌9時 日祝9~17時 17~翌9時の二交代制

 精神科病院とは、入院病床を20床以上所有している病院をいいます。
 ※メンタルクリニックや精神科診療所とは無床または19床以下

 私が働いていた精神科病院は月に2回程、精神科救急医療の当番病院として稼働していました。

 精神科救急医療を受診される方は、薬を何らかの事情でなくしてしまった人や、急な発症で受診を希望される方、警察、保健所、救急隊などからの受診要請があります。

 他の病院の事情は分かりませんが、私が働いていた病院では、当番病院時のメインの担当は私とその日の当直医だけ。診察時と入院時には病棟看護師さんに応援を依頼する、といった体制でした。

受診相談

 救急当番日の受診相談は、基本的に急性期病棟へ電話が入ります。
 ※外来の電話受付が機能していない時間帯のため

 そして、私へ内線で連絡があります。

 そのため、場所を移動する際は、何処に行くのか明確に伝える必要がありました。
 ※院内PHSなどはなかったため

 受診相談を受けると、現在の症状や、他科の診療が優先されないかを判断して診察の可否を判断します。

 私が受診相談の対応をしている場合は病棟主任が代わりに対応してくれていました。
 ※救急当番日は迅速な対応が必要なので、いずれかの病棟主任を配置していた

診察の判断

 受診相談の診察の可否は、受診拒否をしてしまう当直医もいるので、私が医療機関としての判断をしていました。

 依頼を受けると当直室に電話をして、受診を拒否しないように誘導します。

 当直医により性格も違いますから、受診までのエピソードを考えて架電します。

 幸い、私は精神科専門医が
 「精神保健指定医」
 になるために
 「精神保健福祉士法」
 を教えたり(教えると言っても、ほぼゴーストライターでしたが)、症例を集める役割もしていたので、その辺はあまり苦労はしませんでした。

医師への根回し

 救急当番日に診察依頼を受けるということは、院内の仕事を増やすことになりますので、歓迎されるということはありませんでした。

 時には、
 「○○先生の指定医の症例で必要なので」
 時には、
 「病床の稼働率が悪いので」
 などと、断りそうな当直医には回答の想定をして用意しておきます。

 もう、政治ですよね。

 当然、救急当番の意義を理解している当直医は断りません。
 断わる先生が意義を理解してないとは言いませんが。

 当直医もあんまり無茶しちゃうと看護師さんに嫌われちゃうのです。
 医療機関は看護師さんの協力なしでは、手が回りません。

 実際、採血とかも先生より上手な看護師さんもいる訳です。

病棟との調整

 当直医から診察許可を貰うと、受け入れ候補の病棟を検討し調整をします。

 こちらも同様に断られる時があがあります。
 ※受診後、入院となることも考慮し先に調整します

 例えば、内科的な身体合併症がある男性患者さんの入院調整を身体合併症病棟にすると、
 「それは、男子急性期病棟じゃない?」
 といわれたり、まあ、何かこちらも政治なんです。

 入院受け入れの調整って大変だったんです。
 特に常設で救急外来のない病院は大変です。
 ※当番日までにはできるだけ空室を確保しておくのも大変でした

病室の確保

 病棟が決まると、次に病室の調整をします。

 男女混合病棟の場合は、異性同士が同室にならないように、部屋替えが必要になる場合があります。
 ※性的トラブルのリスクを最小限にするため

 閉鎖病棟であれば、入院患者さん同士の疾病特性や性格、相性などによって、部屋替えが必要になります。

 例えば、薬物依存症の患者さんと統合失調症の患者さんを一緒にすると薬物依存症の患者さんが統合失調症の患者さんをイジメたり揶揄ったりするケースがあるからです。
 ※個人の特性や生活・成育歴により差異はあります

 そして、部屋替えは大変です。
 大きな理由は長期の入院患者さんが多く、荷物が多かったり、夜間に病状が悪化している患者さんがいるためです。

受け入れ準備

 病棟調整を終えると、医事課で受診予定者が初診か照会し、外来カルテを用意します。
 ※初診であれば外来カルテの作成、受診歴があれば外来カルテを用意

 カルテの準備を終えると、電気を点けたり、診察室の準備をしたり、救急搬送口の鍵を開けたり、診察準備を整えます。

 そして、サイレン音が鳴ると、当直医と受け入れ病棟に電話をして、救急搬送口に向かいます。

診察

 緊急車両が到着後、患者さんと同伴者を診察室に誘導し、診察が始まります。

 受診される患者さんは、急性期症状が多いため、ほとんどのケースが入院適応になります。時には、緊急措置鑑定を実施する場合もあります。

 受診後、入院する患者さんの病状によっては薬剤の準備も必要になります。ほとんどが、病棟の常備薬で対応がとれますが、状況によっては薬剤保管庫に行かなければいけませんでした。

 入院適応にならなかった患者さんには、「預かり金」を預けていただき、預かり書を発行したり、保険証をコピーしたりします。
 ※生活保護の場合は医療券を発行してもらうため支給自治体を聞きます

入院

 一方、入院適応と判断されると、患者さんを受け入れる病棟は、患者さんの誘導と荷物検査を実施します。

 精神科は荷物検査があるんです。

 荷物検査で荷物のチェックリストを作成し、貴重品や持ち込み禁止の物品は預かり、患者さんに確認のサインを貰います。

 同時に入院規則の説明を簡易的(夜間が多いため詳細は翌日)にします。
 ※任意入院の場合、任意入院同意書は必ず記名捺印
 ※医療保護入院は配偶者か医療上の保護者の同意書、若しくは市町村長同意(後見人又は保佐人、親権者、扶養義務者も可能)

 その後、病室に案内(救急当番日は隔離室も多かった)し、入院対応が終了となるわけです。

 そして、それらの合間にアセスメントを実施したり入院カルテを作成していました。
 ※初診入院の場合は外来カルテと入院カルテを作成します。

最後に

 精神科救急医療は、この様な流れで行っていました。多いときで、5.6人、受診者が0人ということも、結構ありました。

 当時は若かったことも作用して、職業的使命感が強かったので、診察や病棟調整に根回しや、機嫌伺いが必要なのに疑問を感じていました。

 協力的で快く引き受けてくれる当直医や看護師さんもいましたが、その逆も、存在していたのも事実です。

 それでも、この当時の体験は大変勉強になり、あの様な経験をさせて頂いたことに感謝しています。

 そして、その様な貴重な経験を伝えていくためにも、不定期で精神科救急医療での忘れられない体験も記事にしていきたいと思います。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 このコラムは私の個人的な知見に基づくものです。他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、生活に役立てて頂けたら幸いです。

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