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古市憲寿「平成くん、さようなら」感想
#平成くんさようなら
あらすじ🐳
社会学者・古市憲寿、初小説。
平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。
愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。
なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。
『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る!
感想🐳
最初はセリフに情報が多いなと思いますが、読んでいくうちに徐々に慣れていくかと。
やたらとハイクラスな暮らしの描写に違和感を抱いたけど、それも意図的だったなと読み終えて分かる感じ。
死=実体がなくなることだとすれば、平成くんの選択も一種の死であり、また、リアルタイムでコンテンツが更新されるなら生きていることにもなる。もしかして生死は曖昧なものになっているのかもしれない。
その中でいつまでも寄り添ってくれる自分の分身を預けたのは最大の愛情表現だったのかもしれない。
効率的ではあるけれどそこに存在している体温が生の実感をくれるんだよ、平成くん。