あなたが僕を忘れても #ナイトソングスミューズ
「優しい息子さんを持って、吉田さんは幸せね」
ヘルパーの岩田さんの言葉に、母は嬉しそうに頷いた。
「そんなことないですよ」
僕は曖昧な笑みを浮かべて否定するけれど、その言葉も岩田さんは僕の謙遜だと受け取ったようだ。
「ほんとに自慢の息子さんね。うらやましいわ」
母に笑顔で声をかけ、母もまた頷く。
僕は頭をかきながら、
「すみません。ちょっと飲み物を買ってきますね」
気まずさから逃げるように部屋を出た。
認知症患者を受けて入れてくれるこの介護施設に母が入所してから、まもなく一