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連載小説「1万7000回『こんにちは』を言い続けてきた」 連載6日目

これは在宅医療に挑んだ1人の青年の『こんにちは』の軌跡。
踠き、苦しみ、それでも目の前の人々と全力で向き合った、ノンフィクション小説です。

*山口本人を除き全て仮名としています。

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7回目

 近藤先輩と担当する施設にやってきた。まだまだ新人、先輩の後について学ぶ日々。だけど今日は少し違う。初めてオレが訪問先の方と話す。

 午前の回診同行が終わり、午後からは薬剤師による単独での訪問。まず先輩の訪問について周る。

 「じゃあ山口くん、次の人いってみようか?」
 「はい!」

 事前に誰とお話しするか決めてあった。その方の病歴や薬をばっちり調べてある。大丈夫!


 「南野さんこんにちは!」
 「あら、こんにちは。どちらさま?」
 「薬剤師の山口です。」
 「あら、薬剤師さんこんにちは。今日はどうされたの?」
 「南野さんの体調を伺いに来ましたよ。おかげんいかがでしょうか?」
 「あら、そう?うーん、わからないわぁ」
 「お腹の調子はどうですか?」
 「あら、お腹?いつもいっしょ」
 「足の痛みはありませんか?」
 「あら、足?どうかしら、忘れちゃったゎぁ」
 「じゃぁえっとー」
 「今日は良いお天気ねぇ」
 「あ、そうですね」
 「先生はどちらの?」
 「先生じゃなくて薬剤師ですよ、山口です」
 「あら、薬剤師さん、よろしくねぇ」
 「あ、こちらこそぉ」
 「今日はお天気どう?」
 「晴れてますよ」
 「あら、そうなのねぇ」

 (ん?ん?会話進んでる?何聞きたいんだっけ?)

 「あ、えーと、じゃあ、ありがとうございました、また来ます」
 「あら、そう?またよろしくねぇ」


 む、難しい。もっとたくさん聞きたいことあった。血圧のことや、喉の渇きなど。全然見れなかった。話しが噛み合っているようで、噛み合っていない?いや、噛み合ってる?

 全員の訪問を終え施設を後にする。

 「はじめてやったけど、どうやった?」
 「そうですねぇ…正直あまりよくわからなかったです」
 「どのへんが?」
 「ちゃんと聞きたい情報が聞きだせず、話もうまく繋がらなかった感じがして」
 「そうやなぁ。みんな話しを聞いて欲しいから、いろいろ言ってくれる。そこから薬学的に必要な情報を引き出していかんとあかんなぁ」
 「はい、頑張ります」

 薬剤師として話すとき、そのコミュニケーションはただの会話になってはいけない。相手の問題を引き出し、解決策を考え出すことが必要。
 まだまだそのスキルが足りない。

 話しをするのはできた。
 その先のことを目指さないと!
 もっとコミニケーションを磨こう!


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