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さよならハッピーエンド

ずっと好きだった人が結婚したらしい。結婚相手はサークルの先輩で、2人は学生時代から付き合っていた。恋人がいない人は全員がライバルだけど、恋人がいる人はライバルが1人しかいないと、私の悩みを聞いた友人が言っていたことをふと思い出す。たしかにライバルは1人かもしれないけれど、私には2人の幸せを壊す勇気はなかった。

好きだった人の結婚は、友人が結婚式に出席していたのをインスタのストーリで見たから知った。それがなかったら知らなかったかもしれない。世の中には、知らない方が幸せなことがたくさんある。私と好きだった人はそもそも友達ではなかったのかもしれない。同じ大学に通い、同じサークルに所属していただけ。それ以上にはなれなかったし、なりたいと思っても、見向きもされなかったにちがいない。

プロポーズは好きだった人からで、夜景の見えるレストランでバラを100本送ったらしい。ありきたりすぎて笑った。広告代理店で企画の仕事をやっているんだから、もうすこし捻れよ。そもそもサプライズなんてまるで興味なさそうなのに、そんなことするんだ。人は見かけによらないとはまさにこのことで、私が見ていた好きだった人は彼の片鱗だけだったんだろう。

ああ、私じゃなくて良かった。バラを100本ももらったところで、お花が好きではないため、処理に困るだけ。自分の世話すらもままならないのに、バラの世話なんてできない。すぐに水やりが面倒になって、どうせすぐに枯らしてしまうだけ。バラをもらって喜ぶ素直な女性になりたかった。ひねくれ者の私はバラなんて興味がないし、そんなサプライズをされるよりも、家でご飯を食べているときにプロポーズされるぐらいがちょうどいい。

周りの人がどんどん結婚していく。今年はどうやら結婚ラッシュらしい。インスタには子育てのストーリーを上げ、Facebookには結婚報告と、自分の幸せを見てほしいと思っているのが透けて見える。芸能人でもないのに、一般人の結婚など誰が興味あるのだろうか。って私が結婚したときに、結婚報告をSNSでしていたら笑える。そのときは、どんな心境の変化があったのかをぜひ問うてみたい。

会社の先輩は30年連れ添った旦那さんと離婚した。家事をしない、文句ばかり言う、私はあんたの母親じゃないと常々言っていたから時間の問題だとずっと思っていた。そういえば5年前に別れたあいつも離婚したらしい。私を捨てて、付き合った女をあんなに好きだと言っていたくせに、結局こうなるのかよ。

待ち合わせに2時間遅れてきて、ごめんの一言も言えない男。周りからはすぐに別れた方がいいと言われたし、別れたときは祝勝会を開かれるぐらいのどうしようもない男。それでも好きだったのは事実で、涙はちゃんと流れていた。久しぶり。元気?だなんて都合が良すぎるし、それにまんまと応えてしまう私は頭が悪すぎて笑える。結局1回だけセックスをしてそれっきりだ。どうしようもない男はいつまでたってもどうしようもないし、頭の悪い女はいつまでたっても頭が悪いままだ。

昔の私はメールのお問合せボックスに何度もアクセスするぐらい健気な女だった。いまも既読無視はこたえるし、未読無視なんてもってのほかだ。返事はすぐにしちゃダメだってYUIは言っているのに、すぐに返事をしてしまう。二人並んで撮った写真。お揃いのパジャマ。イヤリングやネックレス、別れた男との思い出は全部取ってある。でも、ペアリングだけは捨てた。理由は特にない。なんとなくだ。

メンヘラが嫌いだと男は言う。女はメンヘラになりたくてなっているわけじゃないし、男のメンヘラの方がよっぽどタチが悪い。メンヘラにさせないぐらいの努力はしてほしいし、お前が悪いんだよと言っても、男は馬鹿だから頭にはてなマークが浮かんで終わるのがオチ。

自分に自信がないから相手に求められることで、自分を保っていた。自己肯定感が低い人は、相手に好かれるとなんで私なんかのことを好きになるの?と思ってしまう。相手が悪いわけじゃないのに、相手を疑って、勝手に裏切られた気になって、勝手にメンヘラモードに突入する。

人は孤独に打ち勝たなければならない。寂しさと寂しさを持ち寄ったところで、ぽっかり空いた穴が塞がることはないし、もっと大きな穴を作ってしまうだけ。それでも孤独に打ち勝った試しはない。以前、深夜にふと寂しくなって、どうにもならなくて、外で星を見た。あの星の輝きを忘れられないし、静まり返った夜の街は自由かつ悪いことをしている気分になれる。孤独に負けたことで出会えた奇跡がたくさんあるからこそ、孤独に負けてもいいのかもしれないとさえ思った。

かつて描いた理想像があった。25歳で結婚して、27歳で子どもを産む。でも、32歳になっても子どもはおろかパートナーすらいない。現実を見なよとたくさんの人が言う。それは正しい意見だと思うし、現実を見ずに生きてきた結果がこのざまである。友人のアドバイスはいつも正しかったし、私の考えはいつも甘かったと、常々思う。

ずっと好きだった人が結婚したらしい。結婚相手はサークルの先輩で、2人は学生時代から付き合っていた。恋人がいない人はライバルが全員だけど、恋人がいる人はライバルが1人しかいないと、私の悩みを聞いた友人が言っていたことをふと思い出す。たしかにライバルは1人かもしれないけれど、私には2人の幸せを壊す勇気はなかった。

世間の一般論に流される人間になりたかった。後悔、失望、自分への怒り。抱える感情は負の感情ばかりで、もうどうしようもない。甘ったるいプロポーズで素直に喜べる女性になりたかった。いまからでも間に合うかなと考えてみたところで、結局私は理想像を捨てきれないのだろう。守られるのなんてまっぴらごめんだし、私が守ってやるよぐらいの気概で生きていたい。そして、いつの日か私を捨てたすべての男が後悔するような女になりたい。

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