ここではないどこかへ

30年間、ずっと大阪で暮らしてきた。生まれも育ちも根っからの大阪人だ。歩くスピードは早いし、話にオチがなければ気が済まない。移動式のエスカレーターで止まるなんてありえないし、ボケもツッコミも両方やる。

住み慣れた街はとても居心地が良く、すぐに道に迷う僕も迷子にならずに済んでいる。選択に迷わない生活はとても楽だ。でも、決められた道をただ辿るだけで、そこにはちっとも達成感が湧かない。これは自身の問題なのだけれど、東京にいるときは自分から人を誘うくせに、大阪にいるときの僕はほとんど人を誘わなくなった。

今住んでいる大阪で新しい出会いがあったとしても、来年の2月には東京に移住する。新しく出会った人と仲良くなれるのは嬉しいけれど、その分別れが辛くなるだけ。そんな理由で、大阪にいるときの僕は人を誘わなくなってしまった。

買い物をする。服を買う。家に住む。衣食住のどれを取っても、いま住んでいる場所で完結する。お仕事はほとんどリモートで完結するため、家からもほとんど出ていない。わざわざ電車に乗って、どこかへ行く必要がなくなった。大阪に住んでいる自分には何の意欲もないのかもしれない。

大阪に住む自分に危機感を抱いている。はやく大阪から出たい。そんな気持ちがひしひしと湧いてくる。東京に住んだからといって何かが変わるわけでもない。それは承知の事実である。居心地がいい大阪にこのまま住んでいると、そこにあったはずの意欲がどんどん削がれて自分がダメになっていく。そのさまを黙って見ているのが辛い。

いますぐに東京に移住したい。でも、移住できない理由があって、それを解消するまでは辛抱が必要だ。もしかすると、大阪の居心地の良さが自分をダメにしていると思いたいのかもしれない。自分がダメな理由を何かに押し付けて楽になる。向き合うべきは自分自身なのに、目の前の地獄から逃れようとしている。だめだ。情けない。そんな自分がどんどん嫌になる。

現在、東京で仕事を探しているんだけれど、正直あまり成果が出ていない。1年前までは行動すれば結果がついてくると楽観的だったのに、東京移住が近づくにつれて、焦りがさらに大きな焦りへと変化している。どうすればいいかわからない。打つ手がどんどんなくなっていく。本当に悩みは尽きないものだ。焦りを味方につけたいのに、味方につけ方がわからない。

もうここではないどこかへ行ってしまいたい。いっそのこと自分を誰も知らない土地に行ってしまいたい。そうすれば少しは楽になるのかな。なんて、嘘だ。このうまくいっていない現状から逃げ出すと、絶対に後悔するのがオチ。

一度頑張ると決めたのならば、最後までやり通す。それが自分の信条だから。現状から逃げ出さないため、いつか笑ってこの記事を見返すために、このダサい記事をここに残しておく。