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かつて千林商店街には、自分の好きなように生きればいいと教えてくれる人で溢れていた

生まれ育った千林には、100年以上の歴史を持つ千林商店街がある。どうやら大阪で3番目に大きい商店街らしい。1番は天神橋筋商店街、2番は空堀商店街、それに次ぐ商店街が地元にあったことを幼少期は知らなかった。中学生になった頃に、別の商店街を歩き、千林商店街がいかに大きな商店街であるかを知った。当時は特に高揚感はなかったけれど、今は過去に大きな商店街がある街に住んでいたことを誇りに思っている。

商店街の天井は曲線だ。雨の日も気にせずに歩くことができるのは嬉しい。行事ごとに街の人たちが商店街の至る所に飾り付けをしている。クリスマスの時期に、誰もいない夜にイルミネーションが輝いていたその様を見るのがなんとなく好きだった。夏は商店街がお祭りの会場と化す。地域に住む子どもたちが出店の周りにたくさん集まっている。その楽しそうな様を見ながら、商店街を歩くのが好きだった。

マクドナルドでアルバイトをしていた頃に、商店街の近くのマンションにデリバリーする機会があった。その時に初めて商店街のアーケードを上から見たのだけれど、ああ、こんなものかと落胆したのを今でも鮮明に覚えている。天井の上はただの外壁に過ぎない。こんな気持ちになるなら見なければよかったとも思う。アーケードは商店街の中から見るから美しいのだと知った。

商店街は平日でもたくさんの人で賑わっている。他の商店街では過疎化が進み、シャッターの数が増えているけれど、このご時世でも開いているお店の方が多いのは地元民からしても誇らしいことだ。

千林には二つの駅がある。京阪千林駅と地下鉄谷町線千林大宮駅だ。この二つは対極の位置にあり、歩いて10分ほどかかる。後者は千林と大宮の間にあるため、千林大宮と名付けられたようだ。地下鉄谷町線は街と街の間に駅を設けている駅が多い。どちらの街の人でも通いやすい場所に作ったのは、とてもありがたいことだと昔の人に感謝する。

それにしても千林商店街は人が多い。日中は曜日に関係なく、人混みをすり抜けるのに苦労する。それだけ商店街の組合の方達が頑張ってくれているのだろう。そこに関しても感謝しかない。昔は髪色が紫の人や阪神タイガースのユニフォームの人がたくさんいたのだけれど、最近はほとんど見かけなくなった。数年前にはなるが、千林商店街では豚を散歩させている人がいた。その人は僕たちの間でも評判になり、見かけるたびに「豚を散歩させている人を見たで!」と連絡し合ったものだ。

髪色やファッションを自由に楽しむ人、豚と散歩する人など、千林商店街には型にはまらない人たちがたくさんいる。そこから学んだのは人生は好きなように生きればいいということだ。人の目など気にしなくていい。誰もが思うがままに生きられる場所。そんな街で生まれ育ったからこそ、会社員ではない道を歩みたくなったのかもしれない。文章を書いて生きる。それは簡単ではない。だが、千林商店街に通う人を見ていると、自分もなんだかやれそうな気がした。あの場所に通うたびに、不思議と力が湧いてくる。千林は自分の背中を押してくれた大好きな街だ。今はもう地元を離れてしまったけれど、落ち込んだ時はいつも千林商店街での日々を思い出している。前回の帰省時はお店が閉まっていたので、今度帰った時は千林商店街にある唐揚げ屋さん足を運びたい。

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