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とても興味深い文章がありましたので、最初にお読みください。
幼い子を散歩に連れ出した父親が、アリが自分の身体より大きい虫の死骸を必死になって運んでいるのをしゃがんで眺めている子に、
「いつまで見てるんだ。もう行こう」
などと急かす。散歩というのは、何か目的があって歩いているのではなく、散歩自体を楽しむものだろう。この場合、急かす父親と興味のままに漂う子と、どちらが散歩を楽しんでいるだろうか。どちらが豊かな時間を過ごしているだろうか。
アリの観察に夢中になっている子は、散歩そのものを思う存分楽しむことができている。それに対して、そんな子を急かす父親は、何か別の目的のために歩くことに馴染みすぎたため、散歩そのものを楽しむことを忘れてしまっている。
この文章を読むと、現代人の「せかせかした感じ」が伝わってきます。
「いったい何をそんなに急いでいるのだろう?」
「いつから私たちは、こんな風になってしまったのだろう?」
心に余裕がまったくありません。
幼い子は今を生きているのに、父親はどこを生きてる?
幼い子にとって、今まさに新しい発見をした瞬間です。詳しいことは分かりませんが、何かの力に導かれて立ち止まっているわけです。もしかすると、この瞬間が、幼い子の人生を大きく左右する可能性のある出来事かもしれません。大人は、幼い子の好奇心を見守ってあげる必要があると思います。しかもそれが親であれば、なおさらです。
この「幼い子」は確実に「今を生きています」。それを父親が奪おうとしているようにも見えます。理不尽な話ですよね。
情報量の多さで時間の流れが違う
私は神戸から奈良へ引っ越してきて、時間の感覚がずいぶん変わりました。都会の方が「目に入る情報量が多い」ので、常に忙しく時間に追われる感覚でした。ところが奈良は自然豊かで、「目に入る情報は少ない」ので、時間の流れがゆっくりになります。
途中で気になるものを見つけると、戻って確認するくらい、余裕の時間も存在します。神戸では考えられません。気になったとしても優先順位があり、順序間違えると時間ロスが大きくなり、ストレスが溜まることも多かったです。奈良では余裕です。
心の余裕が、今を生きること
今の私には、立ち止まってアリを眺める時間があります。それはただ「時間」という存在だけでなく、「心の余裕」が一番必要だと感じています。どんなに時間があっても、見ようとする好奇心がなければ、立ち止まることがありません。
大人になると「時間優先」で生きていることで、「自分の人生は目標に向かって進んでいる」と、勘違いしてしまっているのかもしれません。「好奇心」をどこかに置き忘れ、本当に大事な「生きる意味」すら忘れて、「時間という魔物」に飲み込まれてしまった末路なのかもしれません。
60歳を過ぎれば、これまでの生き方を少し見直して、「心の余裕」を作ってみませんか? 今まで見落としてきた素晴らしいものに出会えますよ、きっと!
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