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楽曲解説集 ショパン

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ショパンの楽曲解説をまとめたものです。
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ショパン ワルツロ短調 楽曲分析

ここではショパンのワルツロ短調(第10番)の楽曲分析をしていきます。このページの最後ではショパンの自筆譜と出版譜を見ながら比較していきます。 1 概要この曲は1829年に作曲されましたが、生前には出版されず、死後、友人であるユリアン・フォンタナによって1855年に出版されました。ショパンは生前に発表されなかった作品は破棄してほしいと言い遺していましたが、結果的にはそれは果たされず、フォンタナはショパンの遺稿を集め、遺作として出版させることにしました。作品66(幻想即興曲)以

ショパン ワルツイ短調 楽曲解説

ショパン(1810~1849)の作品が新たに発見されたので、ここでどのような曲なのかを詳しく見ていきましょう。 2024年10月に発表されたショパンの未発表作品。これはワルツ(Valse)と書かれており、1830~1835年の間に作曲されたと考えられています。わずか24小節しかなく、演奏時間は1分少々。イ短調。では楽譜を見てみましょう。 1~8小節目は前奏的な役割を持っています。この部分はワルツというよりもスケルツォにありそうな楽想です。そして全体的にペダルポイント(保続

スケルツォ第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のスケルツォ第2番Op31の解説をしていきます。 スケルツォは「おどけた」「冗談」という意味を持ち、ハイドン(1732~1809)が弦楽四重奏曲に取り入れたりしました。その後ベートーヴェン(1770~1827)によって交響曲のメヌエット楽章の代わりにスケルツォを導入し、以後の交響曲の基盤を形成しました。そんな中で、ショパンはこのスケルツォを独立した作品として4作品を作曲しました。スケルツォ第2番はショパンのスケルツォの中では一番演奏機会があ

ノクターン第1番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第1番を解説していきます。第2番、第3番と共に作品9として出版された初期のノクターンです。第1番はそれほど複雑な構成をとっておらず、演奏も比較的容易です。その中でもミクソリディア旋法を使用するなど、創意工夫がこなされています。では早速見ていきましょう。 1 概要ノクターン第3番は1831~1832年頃に作曲された作品です。1831年というと、ショパンが故郷ポーランドを発ち、フランス、パリに活動拠点を移した頃です。第2番、第3番

ノクターン第20番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第20番を紹介します。この曲はもともとノクターンという題名はついておらず、あくまで曲想がノクターン風であることからノクターン第20番と記されるようになりました。速度標語の❝Lento con gran espressione❞の名でも知られています。では、詳しく見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1830年とされており、この年はショパンが祖国ポーランドを離れウィーンに向かった年であり、その翌年には彼の死まで活動の拠点とな

ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調 楽曲分析

今回はショパンのワルツ第7番Op64‐2の楽曲分析をしていこうと思います。有名な子犬のワルツと共に出版されたこの作品は、このワルツはそこまで技巧的でなく、またメロディの出来栄えもよいので彼の作曲したワルツの中では人気の高いものの一つです。ではどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1846年~1847年にかけてとされており、ショパン晩年の作品です。第6番、第8番と共に一つにまとめられOp64として1847年に出版されました。この1847年

ノクターン第3番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第3番を解説していきます。ノクターン第3番は第1番、第2番と共に作品9として出版された初期の作品です。しかし、第1番と第2番とでは作曲技法の発展がみられます。では早速見ていきましょう。 1 概要ノクターン第3番は1831~1832年頃に作曲された作品です。1831年というと、ショパンが故郷ポーランドを発ち、フランス、パリに活動拠点を移した頃です。第1番、第2番と共に作品9としてまとめられ1832年に出版されました。ピアノメーカ

さよならを告げるワルツ ショパン ワルツ第9番

今回はショパンのワルツ第9番の楽曲分析をしたいと思います。この曲は『別れのワルツ』の通称を持ちますが、どのような経緯でこの名がついたのでしょうか。また音楽的にはどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 曲が出来上がるまでこの曲は失われた自筆譜では1835年の9月、ドレスデンと書かれています。 これはヴィンツェンティ・ヴォジンスキ(Wincenty Wodziński)伯爵とテレサ・ヴォジンスカ(Teresa Wodzińska)伯爵夫人との娘である、マリア・

ポロネーズ第1番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のポロネーズ第1番嬰ハ短調op26-1の楽曲分析を行います。ショパンのポロネーズで初めて出版されたものです。有名な第3番や第6番などに比べると個性は薄いですが、彼の祖国の音楽であるポロネーズを理解する上で重要なものとなります。どのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は嬰ハ短調 AーA'ーBーAーCーDーCーAーBーAの複合三部形式です。 しかし、構成に関しては議論すべきことがあります(後述

英雄ポロネーズ 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)の代表作、『英雄ポロネーズ』を楽曲分析していきます。ショパンにとってポロネーズはマズルカと同様に祖国ポーランドの舞曲でありショパンの作品の分析をするうえで重要な作品群となっています。 通し番号付きで『ポロネーズ第6番』と呼ばれますが、未出版のポロネーズが何作品も存在しているので『英雄ポロネーズ』が6番目に作られたものということを表しているわけではありません。また『英雄』の名もショパン自身ではなく他人がつけたものです。 ポロネーズ全曲の中

ノクターン第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第2番変ホ長調の楽曲分析を行います。ショパンはノクターンを約20曲遺しましたが、この第2番が彼のノクターンの中で特に有名なものとなり、ショパン全楽曲の中でも知名度が高いものとなりました。クラシックを知らない方でも聞いたことがある経験があると思います。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造12/8拍子、調は変ホ長調 AーA'ーBーA'ーBーA'ーCの構成です。 AとBを繰り返しながら

子犬のワルツ 楽曲分析

ピアノを弾く方なら一度は憧れるであろう作曲家ショパン(1810~1849)。彼の代表作といえる『子犬のワルツ』の楽曲分析をしていこうと思います。約2分の短い曲で、和声も複雑ではないので親しみやすい作品です。ではどのような構造をしているのか見ていきましょう。 1作曲年現在では1846~47年頃の作曲だと考えられており、他の2曲のワルツとまとめられて作品64として出版されました。通し番号順にワルツ第6番と呼ばれることもありますが、ショパンは生前に出版されなかったワルツを何曲か遺