【イベントレポ】「千葉麻里絵酒サムライ叙任大祝賀会」レポート
「(日本酒提供の世界は)千葉麻里絵以前と以後に分かれると思う。」
どうもこんにちは、意味深な入りで失礼いたします。りょーさけです。
今回は久々に日本酒イベントのレポートを書かせていただきます。
イベントの名前はタイトルにもあるように「千葉麻里絵酒サムライ叙任大祝賀会」です。この一年間で何度か紹介した東京・恵比寿の酒場GEM by motoの千葉麻里絵さんが、この度「酒サムライ」に就任しました。
今回はその酒サムライ就任を麻里絵さんの地元、岩手県の盛岡で祝おうという会でした。酒造りシーズン真っ盛り、飲食店も忘年会シーズン到来で忙しいにもかかわらず、全国にその名を轟かす酒蔵、飲食店などなどの錚々たるメンバーが多数来場していました。
今日はそんなめでたい会の雰囲気や、そこで見聞きした印象的な言動を、ほんの少しですが紹介できればと思います。
では、はじめます。
(※なお今回のイベントは、千葉麻里絵さんおよびGEM by motoの関係者のみ参加可の招待制イベントであることを予めお断りさせていただきます。)
1.まずは会の概要から
この会は12月1日日曜日のお昼過ぎから始まりました。会場はメトロポリタンホテル盛岡の一室で、会場にはこんな感じのセッティングが。
大祝賀会、というところが少々大げさでとってもいい感じです笑
麻里絵さんの入場から会は始まりました。唐突にサカナクションの「アイデンティティ」という曲が大音量で鳴り響くなか、麻里絵さんは複雑な、けれども嬉しそうな表情でみなに挨拶をしながら歩いてきました。
司会は岩手の酒蔵・南部美人の久慈さんが担当されていました。
久慈さんについては「とにかく豪快な方だ」という印象をわたしは持っていたのですが、本物は想像の5倍くらい豪快でした。麻里絵さんと久慈さんは以前コラボレーション企画で一緒にお酒を造ったことがあるそうで、その模様は昨年出版された『日本酒に恋して』(作・千葉麻里絵、絵・目白花子、主婦と生活社)というコミックエッセイに載っています。そちらもぜひ!
松尾大社で行われた酒サムライ叙任式の模様を映したムービーが流れたり、麻里絵さんゆかりの方々がスピーチをしたり…電報が届いたり…本当に盛りだくさんでした。
途中、盛岡の夏祭りの出しものであるさんさ踊りが「ミスさんさ踊り」の方々によって披露されたり、久慈さんからサプライズが麻里絵さんに手渡されたり…。
概要をなぞってるばっかりでは伝わりませんね。とにかく岩手の地のもの、麻里絵さんが好きなもの、そして会場の皆さんの麻里絵さんに対する思いが溢れるプログラムでした。
では、更に詳細に入っていきましょう。
あ、でもその前にしなければならないことがありますね。
みなさん、「酒サムライ」ってなんだかご存知でしたか?
2.「酒サムライ」とは何か?
ハイ、肝心な説明を忘れていました。今回の会を開くきっかけになった「酒サムライ」とはいったいいかなるものなのでしょうか。
(以下の説明は酒サムライの公式サイトを見て一部引用しながら書いたものです。引用したところはカッコ書きにします。より正確な酒サムライの定義を知りたい方は、こちらにどうぞ。)
現代の日本では、様々な状況の変化により日本酒をはじめとした日本発祥の文化や生活習慣が相対的に勢いを失いつつあります。一方、海外の熱心なファンたちによって日本酒、およびその他の日本文化は見直されつつあります。
日本酒やその他もろもろの文化、そしてそれらを育てることで芽生える誇りを忘れているのは当の日本人なのではないか。それを大切にする精神を涵養し、自ら世界に自国の文化を発信することこそ最も大事なことではないのか。
そのような問題意識のもとで生まれたのが「酒サムライ」という役割、および事業です。国内外ともに日本(酒)文化を広めていくアンバサダーと言ったところでしょうか。IWC(インターナショナルワインチャレンジ、毎年ロンドンで行われるワインのコンペです)の日本酒部門の運営や、年一回池袋で行われる日本酒フェアの中でのブース出展などを行っているようですね。
↑今年の酒サムライの方々です。
さて、酒サムライの概要もお伝えしたところで当日の会場の様子レポに移っていきましょう。
3.会場の雰囲気と、印象的なスピーチ
それでは会場内のレポです。一言で言うならば、会場は活気と熱気と真剣さと、あともちろん祝福ムードで溢れていました。
…全然一言で言ってませんね。というか、言えませんよ。このイベント、とても一言でまとめられるような雰囲気ではなかったのです。
だからもう、印象的だった出来事の写真に一言コメントをつけて並べて紹介させていただきます。その後で印象的だったスピーチをこれまた写真付きで紹介します。
↑主役の登場!この素敵な着物を着るためになんと4日間炭水化物を抜いたそうです!(ちなみに主役の大好物はラーメンです)
↑南部美人の久慈さんが作成したムービーです。熱い!
↑各テーブルでは岩手の地酒が飲み放題で振る舞われました!(詳細は後述します)
↑乾杯の音頭は『最先端の日本酒ペアリング』共著者の宇都宮仁先生でした。南部美人のスパークリングでカンパイ!(そういえば麻里絵さんも主演した『カンパイ!日本酒に恋した女たち』のDVDが12月3日に販売開始になりました!そっちも観よう!)
↑前菜からデザートまで岩手の地元食材を使った食事が運ばれてきます…おいしかった!
↑さんさ踊りは賑やかでした。こちらの踊りは8月1日~4日まで行われる夏祭りで披露され、その祭りは今年で42回目だそうな。4日間で35500人もの来場者がいらっしゃったそうです。
↑燗酒に全力な日本酒酒場の店主たちも登場!神泉の燗酒BAR Gatsの水原将さんと三軒茶屋のJOE'SMAN2号の高崎丈さん!東京の燗酒ラバーで彼らを知らない人はいないでしょう。おふたりとも麻里絵さんと親交があるそうです。
↑将さんは福島の酒蔵・仁井田本家の公式お燗番ですが、この日は多種多様な酒をお燗していました。将さんがつけた日高見弥助、最高にセクシーでした。
↑麻里絵さんの指名でスピーチをした栃木の蔵元のお二方!仙禽の薄井さんと鳳凰美田の小林さんです。
↑映画『るろうに剣心』、『3月のライオン』の作品などで知られる映画監督の大友啓史さんがサプライズ登場!大友監督も岩手出身だそうです。全編岩手ロケで制作した新作映画『影裏』と岩手の蔵元「南部美人」「わしの尾」がコラボして造った日本酒に麻里絵さんがコメントを寄せたということで、その縁で会場まで駆けつけてくださったそうな。大友監督は日本酒がお好きなようで、会の最後までいらっしゃって日本酒を飲みながら来場者の皆さんと歓談していました。ちなみに映画『影裏』は2020年2月14日公開予定です!
↑なんだこれは?!(後述します)
さて、なんとなくでも会場の雰囲気はわかっていただけたでしょうか。それでは以下で印象的だったスピーチを紹介します。
3.1 「あれは世界一幸福な一口目でした」もう一人の主催者、佐々木豪さんのスピーチ
先ほど主催者の一人として南部美人の久慈さんを紹介しましたが、実はこの会にはもう一人主催者がいらっしゃいました。それが医療法人佐々木皮膚科の佐々木豪さんです。佐々木さんは麻里絵さんの高校の大先輩にあたる方だそうです。
麻里絵さんのことを噂で聞き、いろいろなきっかけが重なってGEMを訪れた佐々木さん。そこでGEMのスペシャリテ・ブルーチーズハムカツと遠野のどぶろくを食べた際に「これは世界一幸福な一口目だ」と感じ、その瞬間麻里絵さんとアイコンタクトしてこれはとんでもなく素晴らしいものだと感じたそうな。素敵な言葉です。この「世界一幸福な一口目」はGEM by motoに訪れたことのある人ならばほとんどの人が経験したものではないでしょうか。
3.2 「栃木にいるのに、深夜0時過ぎに恵比寿に集合がかかるんです(笑)」 GEMの主力酒を醸し続ける仙禽・薄井一樹さんのスピーチ
薄井さんと麻里絵さんの付き合いはもう10年になるそうです。曰く「10年前に比べて大女優になり、手が届かない存在になってしまった…(笑)」そうな。
「新しい飲み手が麻里絵さんを頼って指標にしているのを見ると本当にうれしく思いますし、これから先の日本酒の未来もすごく明るいなあ、という感じがしております。ただし常に!あなた見られてますから!常にみられているという思いで!日々やっていってほしいと思います。」と薄井さんが言ったあたりで会場は笑いに包まれました。
また薄井さんは栃木にいるのにも関わらず、深夜0時過ぎに「恵比寿集合で」というメッセージが届くというエピソードも披露されました。(ちなみにこのイベントの2日前にも薄井さんは恵比寿に呼び出されたそうです)
どのエピソードにも薄井さんが麻里絵さんを大事に思っていることが感じ取れるポイントが宝石のように散りばめられていて、和やかな空気が会場に広がりました。
宝石と言えば、こんなエピソードが。仙禽は麻里絵さんのお店GEM by motoにPBのお酒を出しているのですが、その中にRaspberyl(ラズベリル)というお酒があります。ラズベリルは宝石の名前で、これはわたしが飲みに行った時の写真です。
ちょっと見づらいんですが、裏に薄井さんが添えたであろうこんなコメントが…。
「GEM by moto 千葉麻里絵氏の単純明快な世界がここにあります」
わたしが麻里絵さんに「なんですかこれ笑」と尋ねると、「いや、あのさぁ…そういうことじゃあないんだよね…。」と苦笑いしていました。親交が深い薄井さんならではのちょっとしたジョークなのでしょう。そう、単純明快なジョーク。
3.3 「これからも大変なことがたくさん起こるだろうけれど、これからも変わらず千葉さんが好きなように生きる、ということがすごく大切だと思うんです!」 鳳凰美田・小林専務のスピーチ
鳳凰美田の小林専務は快活にジョークを飛ばしながら、麻里絵さんの日本酒に対するアプローチの先進性を讃えていました。
たくさんの蔵元(杜氏)が、日々大変な業務をこなして孤独な職人の世界に引きこもりがちになってしまうこと。そんな中で麻里絵さんが従来と全く違う発想で日本酒にアプローチをし、新しいものを具現化してくれるのはきっと多くの蔵元の刺激になっているであろうこと…。
全体を通して素敵だったのですべての言葉を載せたいくらいなのですが、大事なところがぼやけるのは嫌なので一番印象的な言葉を紹介します。
「これからさらに大きな役割を担う度に足かせになるような出来事があるだろうけれど、我々は味方になってあげたい。それでも麻里絵さんがイキイキと生きることが、我々業界のためになるっていうのはたぶんここにいる方全員確信しているだろうと。それを後押しというか、そのエネルギーというのは、これからも我々が千葉さんの味方になるという以外ないと思う。だから、千葉センセイ!これからも我々は味方でいます。」
鳳凰美田は麻里絵さんが初めて日本酒の修行に行った酒蔵です。その模様も先ほどの『日本酒に恋して』に載っています。イベントから帰ってきて、わたしは改めてその個所を読みました。非常に厳しい様子で麻里絵さんを指導する小林専務の姿は、不思議と前に読んだ時とは違った風に見えました。
3.4 「麻里絵ちゃんは感覚的にはもうわかってるけど、それを表す言葉を持っていなかった。」『最先端の日本酒ペアリング』編集者、神吉佳奈子さん
神吉さんは編集者で、もともとはdancyuの日本酒コンテンツの編集をしていた方です。紆余曲折あって編集者の職を離れるはずだったのですが、ある時麻里絵さんに思いっきりにらまれながら「困る。ヤダ。やめるな。」と言われ、またまた紆余曲折の後『最先端の日本酒ペアリング SAKE PARING』(千葉麻里絵・宇都宮仁著、旭屋出版)の編集をする流れになったとのことです。
「麻里絵ちゃんは感覚では分かっていて、最後には科学的にも正しいところに行きつくんだけれど、その道筋を表す言葉を持っていなかった。」という言葉が印象的でした。本を製作する過程で宇都宮先生という心強い味方が加わって、結果作業はスムーズになる…はずだったそうな。麻里絵さんが感覚で言ったことに宇都宮先生がバシッと答えて、その積み重ねで一冊の本も最終的にはできた。けれども実際にはそのプロセスは困難の連続でした。「麻里絵&宇都宮がふたりであちゃこちゃやってるのを聞いて録音する」→「テープ起こしをする」→「麻里絵にフィードバック」→「麻里絵『いやわたしはそんなことを言った覚えはない』」→「神吉さん茫然」…というような出来事も多かったそうです。
これは以前神吉さんがおっしゃっていたことなのですが、麻里絵さんは興味を持つ対象が瞬間瞬間で変わっていくから、考え方もどんどん変わっていくようなのです。その結果、「前の取材日」と「また別の取材日」とでは暫定的な正解が変わってしまっていることがあるそうな。それで一度確定した原稿がどんどん書き直されていき、結果「校了が…校了が…本が終わらなくて大変で…となるの…。」と神吉さんは涙ながらに語ってらっしゃいました。
そうして出来上がった本はこれからも多くの日本酒提供者、製造者、一般の人々の指針となることと思います。(この記事を書いている途中に上記の三者の労作である『最先端の日本酒ペアリング SAKE PARING』がなんだかすごい賞を受賞したとの一報が!フランスのグルマン賞?だそうです。神吉さん、本当におつかれさまでした。)
4.ふたりの蔵元インタビュー「廣木酒造本店 廣木健司さん」「わしの尾 工藤朋さん」
ここで、会場にいらっしゃったふたりの蔵元のコメントを紹介します。廣木さんにお話を伺うまでの過程が非常に面白く恐れ多かったのですが、それは後日書く(であろう)「酒サムライ叙任大祝賀会 こぼれ話編」でお話するとします。
4.1 廣木酒造本店 廣木健司さんのコメント
ここまで読んでいただいた皆様、何の説明もなく冒頭に書かれていた言葉を覚えているでしょうか。実はあれ、こちらの廣木さんの言葉だったのです。あまりに印象的だったので、ドカッと冒頭に置いてしまいました。「千葉さんの日本酒の提供の仕方についてどう思いますか?」という質問に対して頂いたコメントを改めて全部紹介しますね。
「(日本酒提供の世界は)千葉麻里絵さん以前と以後に分かれると思う。僕は王道保守でやるけれども、でも麻里絵さんが色々光を当てることで盛り上がる部分もある。また、飲みに行きたいです。」
お話を聞いたのはほんのひとときでしたが、大変心に残るコメントが飛び出しました。千葉麻里絵は、以前と以後をつくる人。そして廣木さんは自らを「王道保守」と称されました。その言葉の真意までは聞けなかったのですが、以前廣木さんは『日本酒ドラマチック 進化と熱狂の時代』(山同敦子著、講談社)という本の中でこんな風に語ってらっしゃいました。
徐々に技術が上がって、狙った味が出せるようになると、造り手としてはどこへ向かうべきかと考えるようになったんです。人生観にも通じることですが。出した答えは、若いつくり手からも年配の蔵元からも、ひとつの尺度にされるような酒を造りたい、ということです。
ーーー
味の面でも、めざすのは、ど真ん中です。(中略)
突出した個性を持った魅力的な酒が、たくさんたくさんある中で、自分はその一番真ん中にいる。それは現代酒質の中で、最もバランスのとれた味わいということです。僕は、その位置に、自分の酒を置きたいんです。
このように自分の造る酒の立ち位置を見極め、日々酒造りに取り組むのが廣木さんの考える王道保守なのではないかと推察します。そうやって自分の役割に真摯に向き合いながら、麻里絵さんのような提供者の動向にも目を配っているのはすごいことだと思います。これからも廣木さんの造るお酒に期待が高まってしまいますね。
4.2 わしの尾 工藤朋さんのコメント
先程映画とのコラボ酒のところでも登場しました、岩手の酒蔵「わしの尾」の工藤さんにもお話を聞きました。工藤さんには「岩手の酒蔵についてどう思いますか?」という質問をしました。アバウトすぎて申し訳ございません。岩手の酒を飲みすぎて少々酔い過ぎたようです…笑
岩手の酒蔵のお酒は、おいしいのだけれどまだまだ全国的な知名度は低いです。というのも、地元での需要が大きく、外に出回らない酒が多いから。今回映画のお酒に麻里絵さんからコメントを頂いたことで、それをきっかけに岩手の地酒に触れる人が増えて、その方々の日本酒世界が豊かになればと思っています。
会場がにぎやかになり、席を立ってそこかしこでみんながガヤガヤとやっている中、工藤さんはテーブルをひとつひとつ回って映画とのコラボ酒を紹介していました。本当にその熱意が発端になって、もっともっと岩手の酒が広がったらなあ…。と、そんなことを思いながらまた岩手酒を飲んでいました。
せっかくなので、岩手の地酒についても触れようと思います!
5.麻里絵さんの故郷、岩手の地酒の特徴とは
この章を書くにあたって、麻里絵さんに「岩手の地酒の特徴って何だと思いますか?」と聞いてみました。するとこういう答えが返ってきました。
ゆったり時間が流れてる、本当に懐が広い地酒やな
というイメージかな
そんな中で最先端はしる
久慈さんと(遠野の)どぶろくがいるイメージ
「なぜ岩手の人なのに関西弁風味なのか」という疑問は盛岡の方角にぶん投げておくとして、その答えを聞いて「確かにそうだ」と感じました。会場で飲んだ岩手の酒、これまでも何本も飲んだ岩手のお酒を思い出すとそういう雰囲気のお酒が多いのです。ど派手な香りや、鮮やかな甘み、酸味で魅了するというよりはこう、「静かにとなりにじっと座って微笑みかけてくれる」というようなお酒がたくさんある気がします。
(※南部美人とどぶろくの最先端感については後日「こぼれ話」で書こうと思います。そっちもお楽しみに。)
ということで会場で飲んだ岩手のお酒を簡単にですがレビューしますね。
わしの尾。ゆるく果物の香り。淡いパイナップル。味はスパっと切れるのではなくすぅーっと余韻が延びていく。
南部美人。じわりと広がる果実様の香りが印象的。まろみのある質感で、ゆっくりと舌の根にしみていくような感じ。
吾妻嶺。ほのかに香るメロンの様な香り。に、少し混ざるカカオ風味。飲み込んだあと口の中にほっとする充実感が残ります。
月の輪。多種の果実と水彩で描いたチョコレートの風味が溶け合います。太く大きく円を描くようにして口の中を染める。遊び心を忘れない中庸といったところでしょうか。
赤武。美しくりんごとパイナップルの中間。ラベルに描かれる鎧のような重さはまるでなく、軽くすっきりと心地よい風味が広がる。
タクシードライバー。一番個性的。鮮やかな色で飲む人を魅了する。(わたしは飲めなかったのですが、お燗が好評でした)
と、色々紹介しました。今思い出しても、どのお酒も心地よかった。強い刺激で飲む人を圧倒するような力技のお酒はなく、その穏やかな表情で飲む人をも笑顔にするようなお酒たちでした。
岩手の酒が醸したひとびとの笑顔、歓声であふれるあの会場の雰囲気は忘れられそうにありません。素晴らしい時を演出してくれた岩手のお酒に感謝を申し上げます。
6.GEM by moto 千葉麻里絵のまわりで起こる様々な爆発と、これまでとこれからのことなど
最後に、私見ではありますがこの会を通じて再確認したことを述べさせてください。
この一年間で千葉麻里絵さんは本を出して、映画に主演して、様々なイベントに登壇されました。日本酒に感心がある方の多くは何かしら目に留めたことがあると思います。
そこでは麻里絵さんがやってきたこと、やっていることが華やかな形で紹介されています。「信じられないような手法」「魔法のよう」「天才だ」というような文言をつけて紹介されていることもあるでしょう。しかし、まさにそれ故に多方面から揶揄されることもあったはずです。その点は鳳凰美田の小林専務もスピーチでおっしゃっていました。陰口で、SNSで、あるいは直接で…。新奇に見えるものは人に好奇心を、あるいはなんとなくの恐怖を抱かせるからです。
仮に麻里絵さんのやっていることが、初見ではまるで魔法に見えたとしましょう。確かにそう見えるのももっともかと思います。それくらいの衝撃はあります。しかし、多くの人が「魔法だ」「天才だ」で済ませてしまうその所作の中に、千葉麻里絵の泥臭い旅路を感じ取る人は必ずいる。きっと初めは無明の中の一歩だったのだろう、と。麻里絵さんが自分の来し方を振り返って壇上で初っ端から感無量の表情を浮かべたように、素晴らしい手腕の背景に何かを感じ、震えるような感銘を受ける人は出てくるのです。
というか、もう実際に存在しているはずです。
GEMに行って、麻里絵さんが店員さんも含む様々な人たちと接するのを間近で見ていると、それを感じずにはいられない。そういう人たちがどんどん増えていって、奮闘して、また想像もしなかったアプローチが生まれる。人知れぬ競争と協奏が、またその時は「ありえない!」と言われるけれど10年後20年後その先につながるような何かを創造するのです。彼女のまわりではこれからもあらゆるものが爆発する。覚醒する。決してその場に安住せず動き続ける麻里絵さんがイキイキと生きるその季節にともに生きていられることを、心の底から幸せに思います。また「世界一幸福な一口目」を食べて、喜びを噛み締めたい。きっとあの会場にいるみんながそれに近い思いを抱いていたのではないでしょうか。
麻里絵さん、改めまして酒サムライ叙任本当におめでとうございます。これまで大変おつかれさまでした。
でも、たぶん小林専務をはじめとした麻里絵さんの味方であるひとたちは、また次を待ってる。わたしもです。ということで酷ですが、これからも信じられないような衝撃を期待しております。みんな目を凝らして見てますから!あなた、見られてますから!
僭越ながら、最後に千葉麻里絵サポーターを代表して申し上げます。
「ここまで本当におつかれ様でした。これからも走り続けてください!」
最後の最後に、久慈さんが麻里絵さんのために用意したサプライズ。
岩手の海の幸をふんだんに使った特別メニューのラーメンです!これ、めっちゃデカかったのです。会場が一番どよめいた瞬間は間違いなくコレでした。あと、主役の表情が一番良かったのもコレです。
4日ぶりのラーメンを啜って出たひとことは、「生きててよかった」でした。
科学的アプローチとか前代未聞の手法とか、そういうのもすごいんだけれど、こういう風に好きなものに目がなくて、面白いと感じたらどこにでも奔走してしまう感じに惹かれるひとも多いのでしょう。まだの人は今からでも遅くない、一緒に駆け出せ!日本酒の波に乗れ!泡に乗れ!
大変素晴らしい祝賀会でした。主催者の久慈さんと佐々木さんがこの会のためにどれだけ頑張ったのかは想像もつかないほどです。そのお二方にここで再度御礼申し上げまして、レポートの結びといたします。ありがとうございました。