澪つくし倶楽部 「10系が残したもの、30000系が受け継ぐもの」2022.05.14
2022年中の全廃車が噂されている大阪メトロ御堂筋線の10系(10A系)。
22年年明け時点で3編成であったが、5月時点では第24編成が廃車となり、残すは、第25編成と第26編成の2編成のみとなった。
一方の30000系(31系)は現在20編成が運用中で、間もなく第21編成が登場予定だ。
思えば、この10系と30000系は共通している点が多いような気がする。
まず、かつての30系や現在の新20シリーズ(21系・22系・23系・24系・25系)のような、ほぼ全ての路線で運用されている最大ボリューム群たちとは異なり、10系は完全に「御堂筋線の顔」とも言える存在であるし、30000系も最初の導入は谷町線(32系)で現在13編成が運用中だが、その後の編成数や投入スピードを考えると、新たな「御堂筋線の顔」という側面の方が強いと思う。
また、今でこそ当たり前となっているが、登場当初は「奇抜な顔」として話題になったという新20シリーズに比べて、10系や30000系の前面デザインは非常にシンプルなものとなっている点も共通している。
機能面や快適性で特筆すべき点があることもこの両者(両車)は似ている。
10系は登場当初、当時の最先端省エネ技術である「電機子サイリスタチョッパ制御」を採用し、トンネル内の熱問題が深刻化していた御堂筋線に投入された。また、量産時点では地下鉄で初となる冷房搭載車で、従来の50系や30系と異なる「より快適な地下鉄」のイメージ確立に貢献した。
一方の30000系は、単純に新しくて綺麗というだけではなく、御堂筋線の第4編成からは、全座席のシート構造とその素材を、新幹線のグリーン車の座席と同等のものを採用し、快適な座り心地を実現している。これは実際に座ってみてもらうと「良い」と感じられるはずだ。
その生い立ち、見た目、快適性などを踏まえると、30000系という車両は、当初こそ谷町線で30系の置き換えとして登場したものの、その本質は10系の正当な「後継者(車)」という印象が、個人的にはとてもしっくりくる。
「30000系が一つ新たに登場すると、入れ替わりで10系が姿を消す」
今まさにそのような状況である。
時代が変わり、10系から30000系にバトンタッチがなされても、大阪の大動脈の顔となる「上質な地下鉄車両」であることは変わらないのである。