SNSに脳をハッキングされている
短期間で飛躍的にテクノロジーが発達したのにも拘らず、私たちがこの数十年間でいかにそれによる悪影響を被っているのかをリアルに分からせてくれた本だった。
生物は地球上に誕生してから、環境に適応するため、生き延びるために長い年月をかけてて外見や脳のフィードバック機構においても色んな変化を遂げてきた。だが、テクノロジーは私たちが適応するのを待っているはずもなく、私たちは進化し続ける技術との共存に心も体も悲鳴をあげている。何よりそれに多くの人が薄々勘付いているのにも拘らず、四六時中手放せなくなっていることが大きな問題だ。
1番ショッキングだったのは、SNSが私たちの脳の報酬系を利用して、脳をハッキングしている、というテーマ。そんな大袈裟な、と初めは思ったが脳のメカニズムと研究結果を照らし合わせるとそう言わざるを得ない。さらにSNSを開発した人やスティーブ・ジョブズは自分や子どもになるべく使わせないようにしている、という点が皮肉にもこの状況の末路を示しているのではないだろうか。
筆者アンデシュ・ハンセンはただ不安を煽るのではなく、現時点でどうすればいのかを丁寧にエビデンスを用いながら説明してくれる。
私たちは1万年前からほとんど進化を遂げていない。だから当時の行動反射をうまく利用する、スマホやタブレットのデバイスが目に入る、あるいは存在を感じるだけで脳が影響を受ける人もいる(むしろ受ける人が多い)ため、物理的に距離をとる、利用時間を短くする。当たり前のことに聞こえるが、どっぷりとスマホに浸かっている私たちにはやや高いハードルになる。
実際、本書を読む前から半年ほどLINEの通知をOFFにしていた。始めは落ち着かない気がしたが、逆にそうなっていることの方が怖いなと思ったりもした。不必要にLINEを開かなくなったし、誰かが返事をくれていないなどを気にするタイミングが大幅になくなり、いつの間にか心が少し軽くなった気がした。
麻薬やギャンブルなどへの依存よりもはるかに中毒性が高いスマホは、人類のほとんどが使用しているからこそその危険性を危惧できなくなっているのではないかと考える。心と体を小さな画面から解き放って目の前の世界を感じて生きたい。