エンタープライズセールスとセールスイネーブルメント
こんにちは。
2023年はイネーブルメントとエンタープライズセールスに向き合い言語化に努めた年でしたが、結論としては、イネーブルメントはエンタープライズセールスと一括りになると言っても過言ではないくらい強い関わりがあると考えています。
とはいえ、セールスイネーブルメントの研究をして、説明すればするほど、「わけわかりません」と言われることが多くなってきたので、簡易的にまとめてみたいと思います。
まずは、エンタープライズセールスって何なの?何が違うの?ということを皆様言語化構造化されているかと思いますが、イネーブルメントの側面から私の考えをまとめてみたいと思います。
インバウンドの場合
極論インバウンドの場合課題が顕在化しているので、SMBでも同じですが、要するスキルとしてはバイヤージャーニーに沿ってプロジェクトマネジメントをどれだけ上手く出来るかというのが大事なスキルだと思います。このスキルが最も後天的に獲得しやすいスキルなので、どこでもこのスキルがエンタープライズの能力としてよく語られ、教えられる能力になっているかと思います。
稟議プロセスであったり、リーガル、比較検討の整理などの内部プロセスを他社事例や自身の経験から理解して先に進める能力がかなり大事になってきます。
それに加えて、エンタープライズ企業の特徴はステークホルダーの増加があります。
数多くのステークホルダーを巻き込みコントロールしながら進めることとなります。ここは細かいメソッドなどはレジェンドの桐原さんが解説していたりもするので、ご興味あれば聞いてみてください笑
https://note.com/lewk/n/n81bbfdc13863?sub_rt=share_h
決裁者の引き出し方、チャートの作り方、ネクストの切り方などの「メソッド」の話は私より得意な人が多いのでそういう方々にお任せいたします。
アウトバウンドの場合
一方でアウトバウンドの場合は難易度が急激に上がります。ここでイネーブルメントの真価が出てきます。
アプローチの仕方によってその比率は変わるかと思いますが、対話する方々のほとんどがプロダクトやサービスに興味がないのがアウトバウンドだと思います。
それが故に、アウトバウンドは桁違いに難易度が上がると考えられますが、アウトバウンドになった時にバイヤージャーニーにどのような変化が訪れるかというのを下記に示します。というより、これが正しい完全なるバイヤージャーニーとなります。
ソリューションを認知していない、かつ自社の運用に課題を感じていない黒い部分、つまり「No Problem」状態の顧客にリーチすることが大半という整理になります。
便宜上マークしましたが、①は事業計画レベルの課題で、②はそれを細かく切り刻んで課題が明確化した状態と考えてください。つまり、例えるなら【①今期200億売らないといけないのに、このままだと170億で着地する】という状態があり、細かく課題を切り刻むと、採用に課題があることがわかる。人を採用すれば一人当たり2億生み出せるけど、【②採用速度が間に合わない】という細かい課題に分解されて、初めて人材紹介サービスへのニーズが発生するという仕組みかと思います。
理解しやすくするために、バイヤージャーニーに加えて、営業側のプロセスを記載します。
通常のインバウンドは②より右側でリーチすることが多いと思いますが、アウトバウンドの場合、この①〜②の間のところで見込み顧客と会話しなくてはなりません。つまり、事業課題から細かい課題(含むソリューション)まで接続されていない状態にあるのです。
これが難しいと言われる所以であり、「あー別に困ってないです」と言う人たちをなんとか説得して②に連れて行かなくてはいけないのがアウトバウンドの営業になるのです。エンタープライズでは一般的に①から②まで落とし込むのに登場人物が多くなり、かつ時間もかかるので更に難易度が上がる、という整理になります。
セールスイネーブルメント
じゃあ、セールスイネーブルメントって何?ということですが、シンプルに図を使って説明すると、「マーケ、IS、FSなどのロールの皆が同じ目線で総力戦で、このジャーニーをより多く前に進められる状態を作ること」だと考えています。
各役職に分類したときのミッションを整理します。
営業
営業の責務として商談の中で①→②(もちろん②以降のフェーズアップも)を作り出そうとするならば、事業課題から落とし込んで細かい粒度の課題にして、②まで連れて行ける営業が優秀と考えられます。つまりコンサル的なことが出来る方になるはずです。
イネーブルメントで有名なSalesforce社では営業DXのお手伝いしますよ?など事業課題に前寄せした能力やコンテンツを作成してこの①→②の進行を手伝う能力を均一化するようにしている印象があります。
イネーブルメントの営業に対するミッションはここの均一化をできるようなコンテンツの作成、プロダクトとかけ離れた知識のインストール、メッセージの作成などが挙げられます。
イネーブルメントチームがあるケースでも、多くの組織でプロダクトの競合差別化など②以降にフォーカスしてしまっているケースが多いのではないでしょうか?(そこがテコ入れすべきところであればもちろんそちらを踏んだ方が良いと考えられますが)
マーケティング
そもそもコンテンツに関わることが多いので、初期は専任のイネーブラーがマーケティングの部署にいることも多いということも実態としてはあるのですが、ミッションとしてもマーケは重要なイネーブルメントミッションを背負います。にも関わらず、上記したように事例も含めてマーケティングコンテンツはほとんど使われないのです。普段のやり方から脱却しようとしないセールスの癖は思ったより強力で、新たな話法の習得は思ったよりコストがかかります。
一つの理由としては上記したようなバイヤー中心の思考に営業とマーケが足並みが揃っていないというのは良くある話かとは思いますが、しっかりとバイヤーを理解した上で①〜②及びその先のステップにおいて、一つ一つのステップにあったコンテンツを作成して、更に営業にコンテンツをデリバリーしてPDCAを回していくのがマーケターのイネーブルメントミッションとしては重要です。
インサイドセールス
最後にインサイドセールスですが、上記と全く同じことが言えます。以前Xにもポストしましたが、イネーブルメント自体がバイヤー中心の全体最適の作り方なので、「インサイドセールスイネーブルメント」というのは存在しません。
シンプルにインバウンドで入ってくるものは②の周辺であるし、アウトバウンドは①に近いというだけになります。バイヤージャーニー通りに定義しながら、マーケと連携してステップやペルソナごとにスクリプトを練ってPDCAを回していくというのがインサイドセールスが実行するイネーブルメントになっていくということになります。
ユーザベースの中井さんがこの辺りを実際にしっかり取り組んでいらっしゃいますのでご興味あればご覧ください。
タイミング
とはいえもちろん、一番の要素はタイミングであったりもします。①の段階では多くの企業は実行している自分たちが考えた施策への自信を強く持っています。そこに一生懸命訴求しても意味がないと思います。それがゆえに、しつこいインサイドセールスのバリューが出たり、強い(持っている)営業は①により近い段階でコンタクトが出来る営業という整理になります。
だからこそ、人間関係がすでにあって①に近い段階でお客さんから相談がくる営業がエンタープライズセールスとして重宝される傾向にあったりすると考えています。
これは正に、黒いエリアのことを指すと考えられます。ここで信頼できると思ってもらって声をかけてもらえるかは非常に重要なのです。声をかけてもらえるためには自社の製品の知識よりも高い経営の視座で考えることができて、それを落とし込める能力がある人が真のエンタープライズセールスなのだと思います。
最後に
(ちょっと宣伝です)
結局のところ、イネーブルメントの最初は診断が肝です。何がボトルネックになっているのかをSFAで分析し、個々の商談を見に行って戦略を決めていく必要があります。当社のアンプトークではインサイドセールスやセールス、CSのメンバーが商談した内容を見ることができるので、上記したような問題がどこに起きているかを発掘するのにお役立ていただけます。
また、ここまで偉そうに書いてますが、自社でも全く完璧に上記が実行できているわけではなく、まだまだ未知半ばです。来年は、プロダクト中心にしながらも、よりセールスイネーブルメントの普及に本腰を入れていき、この国の営業の世界をまず変えていきたいと思っております。
セールスやCS含めて全方位で仲間を募集していますので、是非興味ある方はご連絡ください!