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特別なスキルは不要!ユーザーインタビューをスムーズに行うための事前対策
自己紹介
こんにちは。私はGO株式会社でタクシーアプリ『GO』のユーザーリサーチを担当している井立と申します。現在、プロダクトマネジメント本部データインテリジェンス部に所属し、マーケットリサーチ、UXリサーチを担当しています。
定量調査・定性調査を組み合わせながら、プロダクト改善や顧客戦略策定を支援をするのが主な業務です。
150人へのインタビュー経験を、何かに役立てたい
2020年9月にタクシーアプリ『GO』がスタートし、コツコツとユーザーインタビュー(デプスインタビュー)を重ねた結果、累計で150人以上の方々にご協力いただいていることに気づきました。本当にありがたい事です。
せっかくなのでこの経験を元に、B2CのWEB/アプリサービスに関わる方の役に立つような記事を書きたいと思います。
想定読者
・B2C、B2B2Cの自社サービスに携わる方
・エンドユーザーからインサイトを得たい、というニーズがある方(マーケター、デザイナー、PdM、BizDev etc.)
・これからユーザーインタビュー(デプスインタビュー)にトライしたい方
・インタビュー業務を好きになりたい方/強みにしたい方
・サービスが既にローンチ済みであり、ユーザーに対しアンケートを実施できる環境にある方
インタビューあるある:うまく聞けるかしら?
インタビューを実施するにあたり「うまく聞けなかったらどうしよう?」という不安・心配は、誰しもが経験するものです。
前述の通り今までに150人を超える方々とお話をしてきましたが、毎回緊張します。そしてほとんどの場合で杞憂に終わっています。
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大丈夫、事前の準備で十分対策できます
そもそも「うまく聞く」ためには、特別なスキルや話術が必要なのでは?と思われる方もいるでしょう。
しかしそれは大いなる誤解で、実際のところは事前の準備で概ね対策できます。
それをお伝えするのが、本記事の目的でもあります。
ポイント1:何のための調査か?をシャープにしておく
ユーザーインタビューをするとなったら、何はなくともまずは以下のような感じで調査概要(目的・背景・仮説や検証ポイント)を言語化しておきます。
ちょっと長いですが、この程度まとまっていればすでにこの調査の6割は成功していますから、頑張って読んでみてください。
調査概要 ※内容はフィクションです。
<目的>
・自社にて開発・運営をしているキャッシュレス決済アプリ(以下、自社アプリ)に追加された新機能(以下「機能A」)の利用阻害ポイントを把握したい。
<背景/ファクト>
・自社アプリに待望の「機能A」を追加したものの、利用率が芳しくない。
・ログデータを分析したところ「機能A」自体のアクセス数は多いが、何らかの理由で利用を断念(離脱)してしまっている。その結果「機能A」の利用経験者はユーザーの10%に留まっている。
・一方「機能A」を利用した人は、以前と比べて自社アプリの利用額が高まっている事がわかった。
→「機能A」の利用を促進することで、流通取引総額を引き上げる事ができるのではないか、という期待が持たれている。
<検証ポイント・仮説>
1.機能Aの利用前離脱率が高い
→操作上のUIに課題があり、利用障壁となっているのではないか?
2.利用経験者が全体の10%に留まる
→「機能A」のニーズが限定的なのではないか?実際の経験者から、具体的なニーズやユースケースを聴取したい。
3.「機能A」の利用後に自社アプリの利用額が上昇
→機能Aが利用を直接後押しをしているのか(因果関係)、機能Aのニーズが高い人と利用頻度の高い人の属性がたまたま同じなのか(相関関係)、聞き取りを元に検証したい。
ポイント2:「誰に」「何を聞くか」
ユーザーインタビューの肝は「誰に」「何を聞くか」の設計にあり。
私がもしこの調査を担当するならば、以下のように「誰に」と「何を」を設定したいと思います。
グループ1:「機能A」の利用を試みたが、離脱した人
・具体的な離脱ポイントを検証
- 離脱した理由の把握
- UI/UX的な課題の有無を確認
・「機能A」に対するニーズの強さを検証
- (ニーズが強い場合)どのような改善が必要かの聴取
グループ2:「機能A」をヘビーユースしている人
・自社アプリ及び「機能A」の利用目的、具体的な利用シーン
- 「機能A」のニーズが一般的か、特殊かどうかを確認する
・「機能A」の初回利用時に、何か利用障壁はあったか?
- あった場合、障壁突破を後押ししたモチベーションは何だったか?
・「機能A」の存在が、自社アプリの利用金額上昇に影響しているかどうかの確認
こんな感じで、「誰に」「何を聞くか」を設定できていれば、この調査は既に7割成功しているといえるでしょうw
この後「何を聞くか」をもとにインタビューフロー(インタビューの台本。全体構成に併せ、時間配分、トークスクリプトなどを書き下したもの)を作成します。なお、インタビューフローについて言及すると長くなるので、いつか別記事で書きたいと思います。
ポイント3:スクリーニング
次に「誰に」に該当する人を捕まえる方法を考えます。
リーズナブルな手法としては、ユーザーにアンケートを実施すること。
「誰に」に合致する人を炙り出すような設問を用意し、インタビュー協力者をスクリーニングします。可能であれば、利用ログを参照して裏付けを得ると、より正確性が上がります。
さて、ここで何人位に話を聞けばよいか?という疑問があるかと思います。
「誰に」「何を聞くか」の対象範囲が広すぎない限りは、1テーマあたり4~5名程度のインタビューで知りたい事象の8割はカバーできる、そんな印象を持っています。(今回の例では2グループ作成するので、計8〜10名)
アンケート等でスクリーニングを行い、条件に該当する人に協力を取り付けることができれば、なんとこの調査は既に8割成功していますよ!!
ポイント4:インタビューはインタビューフロー通りでOK
繰り返しになりますが、「誰に」「何を聞く」が明確になっており、イメージ通りの人が捕まえられているのであれば、もうその調査を失敗させるほうが難しい位です。STEP2で作成したインタビューフローに沿って、焦らず落ち着いて進行してください。
はじめは台本通り進行するので手一杯かもしれませんが、質疑応答をしていくうちに、掘り下げるべきポイントがわかってきます。
また、実は特殊なテクニックがあるのでは?と思われる方もいるかも知れませんが、基本的には台本通りの傾聴姿勢でコミュニケーションができれば大丈夫!
ユーザーさんも何かしらの言いたいことがあって参加してくださっているので、何も心配することは有りません。
ポイント5:想定外を歓迎
インタビューは初対面の方とのコミュニケーションなので、事前に準備しきれないものがあっても当然です。
逆を言えば何か想定外の事をきっかけに、想像を超えるインプットが起こりうるのもまた確かなのです。
当初の調査計画から大きく逸脱しない範囲で、臨機応変にインタビューを楽しんでみてください。
「あなたのお話に興味を持っていますよ」という気持ちが相手に伝われば、ユーザーさんもリラックスしてインタビューに参加することができると思います。
いかがでしたでしょうか?
イメージを湧きやすくするため、かなり具体的な架空の事例を仕立ててご説明しましたが、B2Cのサービスであればよしなに流用できるものと思います。
また、専任のリサーチャーでなくても実践できる内容ですので、普段はマーケやってます、本職はデザイナーです、みたいな方でも是非チャレンジしてみてください。
最後に
GO株式会社では、一緒に働く仲間を募集しています。
ユーザーの声を聴きながら移動の未来をつくってみませんか?