体に腑に落ちた瞬間
私は1人旅が好きで、ちょっとでも時間ができると1人旅に出る。特に電車に乗るのが好きなので、東京から実家の大分まで青春18切符で鈍行列車で往復したりする。
井上ひさし作「父と暮せば」に美津江役として出演した翌年2017年4月、急遽1週間時間ができたので鈍行列車で旅に出ることにした。
行き先は、まだ行ったことのない房総半島か東北だな。
South Island(九州の大分)で育ったので迷った挙句、東北に行くことにした。
宿もその日に決める、その日暮らし。
私の旅スタイルはガチガチにプランを決めないタイプ。
ちなみに1人旅しかしたことがない。修学旅行などの団体行動は苦手で体調を崩してしまう。
何気なく、特に何の意味もなく決めた東北だけど、ハッとさせられる場所に降り立つ。
それは陸前高田市や石巻市などの3.11の被害が大きかった場所。
2011年から6年も経っているのにまだ人間が住める場所に戻っていなかった。
このだだっ広い殺風景を見た時に、「父と暮せば」の美津江の「あこいらもすっぽり焼け抜けとって」というセリフが腑に落ちる。
このセリフは、8/6原爆が落ちた日、お父さんを残して広島から宮島へ逃げたその3日後、広島に戻った時に見た風景のセリフ。
頭では分かる。
でも、体が、五感が腑に落ちなくて、お芝居が終わってもずっと悶々としていた。
でも陸前高田に降り立った時に「こういうことか」と雷がどっかーん!!と体に落ちたようだった。
文字や写真などの二次元ではわからない情報がいっぱいあった。
この風景を見た時に、アメリカで「父と暮せば」をアメリカの俳優と上演したいって思うようになる。
何でそんなことを思ったんだろう。インスピレーションがビビビッと入ってきた。
戦争と天災は違うかもしれないけど原爆の被害と3.11によって受けた被害が自分の中でリンクしたのかもしれない。被曝によって差別される人がいて、また同じことが繰り返されている。
そしてちょうどその頃、北朝鮮がアメリカへの挑発行為で水爆実験を頻繁やっていたということもあった。
その時に、1人の日本人として、美津江役を、演じた身として行動しなきゃと居ても立っても居られなくなった。