
「だれもが…」って誰のこと?
すべての人を対象とした、という意味で「だれもが…」という言葉を使います。しかし、この「だれもが…」という言葉が、かえって対象者をしぼってしまうことがあります。
行政の提案
行政が提案する、新しい支援体制について説明がありました。趣旨は、サポート力の弱い人をみんなで支える仕組みを作るというものです。(つっこみどころがいっぱいです。)これは、国レベルの施策です。ただし、実施方法は2種類あり、その選択は、地方自治体に任されています。
実施方法の一つは、その仕組みを機能させるために、拠点となる事業所を定める方法です。もう一つの方法は、既存の事業所の機能を活かし、連携していく方法です。横浜市は、後者の方法で整備を進めます。また、私が経営する社会福祉法人が活動する区域が、今年度その対象に指定されています。
その資料に「地域の皆さん全員が主体です!」と書かれています。みんなで連携をして推進していくという姿勢が表れています。しかしその反面、責任の所在が不明確です。誰が何をどのように取り組むのかわかりません。
「だれでも大歓迎」の落とし穴
今、「失敗しないデザイン」という本を読んでいます。集客のためのチラシ作りについて書かれた本です。そこでは、NGワードの一番に「だれでも大歓迎」というフレーズがあげられています。私もイベントのチラシを作るとき、同様の言葉を使います。主催者としては、より多くの人に、また誰でも気軽に来てほしい、そんな思いで、このフレーズを使います。しかし、本著では、主催者の思いとは反対に「だれでも」というフレーズで、よほど興味がない限り振り向かないと言います。
他人事にならないように
今回の行政が提案する仕組み、イベントのチラシ、両方とも万人に呼びかけています。しかし、呼びかけられた人たちは「自分のことではない」、「私はいいかなぁ…」と、他人事のように思います。また、万人を対象に呼びかけることで、中身が薄くなる傾向もあります。
2003年に横浜市営地下鉄が、特定の座席を「優先席」とすることをやめ、「全席が優先席です」と発表をしました。しかしその結果、かえって席をゆずってもらえなくなったとの意見が多く、2012年に「ゆずりあいシート」が設置されました。
理想は、だれもが積極的に席をゆずりあうことです。しかし、疲れていて座っていたいときがあります。だれかがゆずってくれないかなぁ…私も、後ろめたさを感じながら座っていました。「だれもが…」の、難しいところです。
何かを呼びかけるとき、常に呼びかけられる人の視点が必要です。また呼びかけのゴールは、呼びかけられた人が行動することです。より行動しやすい呼びかけを心がけることが大切です。