【読書感想文】人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~
今日のnoteは、久しぶりに読書感想文です。
海老原嗣生さんの著書を読むと、いつも自分の浅はかさに気が付かされて、魂が揺さぶられるような気持になります。そんな海老原嗣生さんの『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』の感想です。
モヤモヤが晴れた
実は、僕は人材サービス業界に長いこといますが、労務管理や人事制度についてはあまり詳しくなく、体系的に理解していません。(勉強不足・・・)
全力で言い訳すると、お客様各社ごとの人事制度や労務管理、教育などについて知っていれば、体系的に理解していなくても、職業紹介や人材派遣のサービスは基本的に成立してしまうのです。
ですので、最近勉強し始めるまで(ここ3年くらいw)、解雇規制も法律そのものが厳しいと誤認してましたし、海外の派遣と国内の比較、労働組合のあり方国内外の違いなど、本当につい最近知ったことのほうが多い状況でした。
そんな僕にとっては、この本は、なんとなくぼんやり理解していたこと(それを理解していないと言う)が鮮明に体系立てて理解できる知識と気づきを与えてくれた本でした。
特に、賃上げやストライキが起こりにくく、給与が上がりにくい原因になっている労働組合の仕組みの欧米との違いは、もっと浅い理解をしていたので全体感を掴めて、とても貴重な学びの機会になりました。
なるほど!確かに産業ごとに交渉があり、賃金水準が決まれば、基本的にライバル企業も同じような給与を払っているのだから、給料以外の部分での勝負になるわけで、労働組合の交渉によっては賃金上げるのも日本ほどは抵抗ないかも・・・そして、労働者側がストライキすれば、欧米は業界ごと止まるから自分の所属している会社だけが割を食うことはないけど、日本はストライキで自社だけが割を食うから、自分がご飯食べれなくなるリスクが高くて、日本ではストライキが起こりにくいのねん・・・国民性じゃないのね・・・全く本質をわかってなかった・・・
このあたり、賃金水準が産業や職種ごとに決まるので転職しやすいでござる。くらいの認識でした。
また、企業内の「キャリアの形」について3パターンに分けて解説があったのですが、商社などが早期抜擢型の人事制度にしたときに感じる違和感についてスッキリ理解ができました。(先日もどこぞの大手商社が実力主義の人事制度へっていうニュースみたけど、自分の足元が見えなくなっている可能性が高いですね。本当は人材の問題ではないのに人材の問題にしているとか。知らんけど。)
僕の会社は一人前になるのに早いタイプの業種だから・・・うんうん。なるほど!
僕にとっては特にこの2点が、学びになったのですが、このあたりは人によって気づきを得られる部分は変わる本だと思います。(その人の理解があいまいな部分が深まる)
普通の勤め人こそ、読む価値あり
僕が一番、素晴らしいなと感じたのが、P156-161です。
個人や夫婦がどのような考えで今現在の日本型の、誰でも階段を上らなくてはいけない社会において、育児や家事とどう向き合っていくのがベターかを提言してくれています。
このような社会問題について語られる本は、ほとんどが未来に向けて、社会全体の提言がされることが多いですし、この本でも終盤において、日本が目指すべき未来の提言があります。(その提言も日本社会がうっかり無理やり欧米のやり方を丸ごとコピーして良い部分を失わないように、熱い想いが詰まってます)
おそらく、一般的に現状についてや個人の処世術の提言が少ないのは、現状を背景に個人へ提言することは賛否が確実に発生し、必ずしもスッキリする答えは出せないということが(だからこそ未来へ提言をする)理由だと思います。
にもかかわらず、現在を生きる個人への提言のあったことで、著者の真摯な姿勢と、想いの伝わってくる素敵な本だと感じました。
この本は人材・HR領域が専門ではない一般的なサラリーパーソンにこそ、読む価値があるのではないかと思います。
自分自身が、企業の人事という切り口で、どのような現状を生きているのか、全体像をつかんだうえで、しっかり理解でき、これからの生き方、働き方を具体的に考えていくことができると思います。
最後に
本来は僕の会社でも、求職者や派遣スタッフのキャリアアドバイスを行う立場の者は、人事の成り立ちや雇用制度について深い見識を持っているべきです。
この本の内容を網羅的に理解しているだけでも随分と提供できる価値が上がるはずなので、会社でこの本を配ろうと思っています。
また、この本を読んでいて同じく海老原嗣生さんの『女子のキャリア ”男社会”のしくみ、教えます』という本を思い出しました。
こちらの本でも、未来への提言をしながらも、現在を生きる方に向けて(2012年時点)の提言をしてくれています。(というよりもこちらは女性への提言がメインかも)
例えば、40歳前半で子供産むことを視野に入れてのキャリア形成を提案していて、すごく衝撃的でしたし、それこそ賛否両論どころか、一般的には「否」が多そうな提案だと感じると同時に、バイアスから逃れ、現実に両足を付けてファクトをベースに提案する姿勢に感動しました。
どう想像しても賛否があることが分かることを主張するのって、強い想いと信念が必要だと思います。僕は、それ以来、海老原嗣生さんのことを尊敬してます。
その尊敬分を差し引いても、ひたすらに現実と向き合った提言によって、様々なきっかけになる本ですし、日本の雇用が、その良さを維持しながら、脱日本型の形を作り出せるよう、できるだけ多くの方に読んで欲しいと思います。
ちなみに、僕の家庭はいわゆる専業主婦を転勤と出産のために泣く泣く選んでいます。海老原嗣生さんの提言で行くと、割を食いかねないですw
けど、そういうポジショントーク的な話にしないで、自分自身は稼げる力を身に着けながら、いろいろな選択肢があり、それこそ泣く泣く専業主婦を選ぶ必要がないような、より良い社会へ少しでも近づくよう、頑張っていこうと心に誓いました。
では、また明日!
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