「うまい棒」値上げでも全然買うよ。と言う件。

皆さんも一度は食べたことがあるであろう、やおきんの「うまい棒」。この10月出荷分から、現在の12円から3円値上げして15円での販売となる。
私は今でもうまい棒買う時があるのだが、3円上がったとしても全然買うだろうなと思っていたところ、同じような気持ちは大勢の方が持っていたようだ。

「うまい棒」は2022年の値上げと合わせ、価格は1.5倍になっている。しかし、1979年の販売当初から1本10円で販売されており、約42年間10円を維持してきた。

その「長年の価格維持」もあり、今回の値上げに対しても批判的な意見はほとんど見られず、むしろ「値上げしても買う」「これまで安く販売してくれてありがとう」といった応援や感謝のコメントで溢れている。値上げしたことで、これまで安い価格を維持してきたことが逆に注目されている結果だ。

同じような例として赤城製菓の「ガリガリ君」がある。2016年に25年ぶりに価格を60円から70円に値上げした。さらにその8年後2024年3月出荷分より80円に値上げとなった。
「うまい棒」と同様に消費者は値上げを受け入れただけでなく、感謝や応援の声がSNSで相次いだ。販売数は減少するどころか増加し、その後も安定して年間4億本を売り上げている。

「うまい棒」と「ガリガリ君」に共通する点として
・長期にわたって低価格を維持してきた
・競合がいない唯一無二の存在である
・固定ファンがいる
・値上げに対して企業側が正直なメッセージを発信している
ことがあげられる。

様々なモノが「値上げ」となる昨今、企業も両社から学べることも多いのではないかと思う。

「低価格の維持」を続けることは、今の時代必ずしも良い企業戦略とは言えない部分がある。しかしながら、ただ値上げをしただけでは「企業努力が足りない」と消費者に判断されてしまう。コスト削減ももちろん必要だが、その商品だけの「付加価値」を示していくことも重要になる。食品で言うなら「こだわった○○産の原料を使用している」などの発信も大切だという事だ。

また「競合がいない」「固定ファンがいる」と言う要素は非常に重要な点だ。「スナック菓子」「アイスキャンディ」というカテゴリーで考えると様々な商品があるが、この両者はそれぞれ「うまい棒」「ガリガリ君」といった商品指名で買われる存在である。長きに渡って親しんできた味とブランドイメージから他の商品では代替がきかないという人も多いだろう。
「歴史」と「親しみ」、大人になっても食べられるし自分の子供にも安心して薦められる「安心感」は他の商品にはない大きな「付加価値」だ。

そして正直で誠実な企業態度だ。「ガリガリ君」は値上げの際に会長や社長をはじめとした社員一同で「謝罪広告」を出している。2016年の広告は、SNS上で賞賛を得ただけではなく、多数の広告賞を受賞している。さらに日本だけではなく、米ニューヨークタイムズにも取り上げられ海外でも話題となった。ただ、これは単なる謝罪だけではなく「ネタ」として話題化することも狙っていたと明かされている。

一方の「うまい棒」は2022年に「42年間、ありがとう。うまい棒は12円へ」という「感謝広告」を展開している。この広告では値上げの理由とともに企業としての「想い」が語られていた。

「ガリガリ君」、「うまい棒」両広告とも、誠実な企業態度に称賛の声が寄せられている。

今回の「うまい棒」値上げはリリース配信とその文章をSNSアカウントから発信するに留まっており、広告出稿はされていない。（9月28日現在）しかしながらSNSでは多くの応援メッセージが送られている。

価格を上げずに量を減らしたり、品質を下げたりする「ステルス値上げ」を行う企業も少なからずある。むしろ多いだろう。しかし、今の時代そうした対応はすぐにネット上で拡散され、悪評を呼び逆効果であることが多い。「価格改定」といった言葉でお茶を濁し、値上げしたことを曖昧に伝えることも同様である。

値上げの告知は、正直で分かりやすくあるべきで、しっかりと理由を説明し、企業としての想いをストレートに伝えれば大半の消費者は理解してくれるということなのだろう。

他が値上げしているからと言ってなんでもかんでも値上げするのは、商品を提供する企業として「消費者に向き合わない企業努力不足」だと思うが、値上げが続く世の中だからこそ「適正価格はどうなのか？」「価格に見合った価値は何なのか？」に向かい合って、消費者に理解のある「正当な値上げ」は企業戦略として必須な時代なのだろう。

ちなみに私は「企業価値」をはかるポイントとして「経営者が正直で誠実である」ことをずっと昔から言い続けている。ただ、残念ながらガリガリ君の「赤城乳業」も、うまい棒の「やおきん」も株式上場はしていない。

上場したら人気になりそうだけどね。

今日はここまで。

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