【ショート小説】夜の自販機とチルアウト
夜の自販機というのは幻想的である。煌々と照らされるディスプレイ画面に所狭しと飲み物が敷き詰められておりその場から2m離れて観察して俺はふとこう思った。「あぁ、なんて几帳面で規則的な美だ。変態の国、日本はさすがだな」と。
さて何を買おうか。そう心の中で独りごちて目に入ったのは「CHILL OUT」である。皆さんはこの謎の飲み物を見たことがあるだろうか。
リラックスする成分が入っている、いわゆるダウナー版レッドブルと言おうか。一応炭酸飲料であり、ハマっている人も多い。そんな認識を持ってくれれば皆さんも理解に容易いだろう。
このチルアウト、なんと210円もするのだ。(たけ〜〜)たかが自販機の飲み物である。
初めて飲んだ時はこの味に210円も使ったのかぁとガッカリして、「もう2度と買わねーよ、このやろ!」と思ったのだが、
気づいたら僕の机にはチルアウトの空き缶がどんどん増えていった。違法な成分は入っていないはずなのに、なぜ。
これはいかん、だってチルアウト高いもん。1週間続けて飲んだら1500円近くいくやん。そう思って今日こそはチルアウトを買うまいと微糖コーヒーのボタンに手を伸ばした。
しかし、ダメだった。僕が買っていたのはチルアウトだった。それもそのはず、、ちょうど今僕はサウナ上がりだったのだ。
サウナ上がりで目に入る"CHILL OUT"という文字に勝てるやつなどこの世に、いないだろう。シュワシュワシュワ--(音と共にいざなわれる。)
さて、今日も僕はチルアウトに手を伸ばす。しかしコンビニでアイツを見ても買う気が起きないのだ。
あくまでも自販機の光に照らされている緑の丸いロゴマーク、1日の頑張りを肯定してくれる、あの不思議な魅力が良いのである。
210円のささやかな贅沢。"CHILL OUT"ぜひお試しあれ。
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