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詩集「日の採集」セレクト集

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1987年に自費出版した詩集から愛着のあるものをアーカイブ。
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2024年8月の記事一覧

いちにち 3

雨の日 無人駅で弁当をひらいた 寄ってきた子猫に骨をやった 冬田に冷たい雨がふる 父を病み…

るーとら
1か月前

いちにち 2

きょうは熱があってつらいから休ませてください あかい菜果にそう言って枯草の上にねた 百舌が…

るーとら
1か月前

いちにち 1

ひとびとの夕餉の灯がともる ぼくは売れ残った うらぶれた商人宿に帰れば 冷めた食事が待って…

るーとら
1か月前

五月

みずいろの植物と乳房を 手のひらにのせ ぼくは魚のように 空に吸いついた 鏡のなかの海のか…

るーとら
1か月前
2

挨拶した

夢とうつつの水際にからだを濡らし さみしいから 万葉のうたびとに身をそらし あおい五月の…

るーとら
1か月前
1

風にふかれていた

ひとり暮らしの背中にさわり 空虚をやさしく包んでいる この布は どこからもってきた 空を…

るーとら
1か月前
1

ぼくと話そう

キリンの鳴く声が 海辺の方からきこえてくる ワニのように一日をあけ きょうのひとりを了えた 朝噛じった果実が 死体のように変色してしまった カーテンをひいて キリンを迎える準備をする こちらの装置のヒビの部分を やわらかくなめてもらえば助かるし ぼくもキリンの孤独を深く 濡らすことができる 自転車がいるかい 迷わずこれるかい 名も知らぬ星の左よこ 35度下方が ぼくの部屋だよ いく枚もの大気圏に燃えて 結石化した病痕を 迷わずたどって ここまでおいで ぼくと話そう