五月

みずいろの植物と乳房を
手のひらにのせ ぼくは魚のように
空に吸いついた

鏡のなかの海のかなたにみえる
ひとの島
遠くなってしまったけれどさみしくない
たのしく風と距離を腰につけ
立っている土地だけゆくことにしよう

五月は水の街
象やキリンやシマウマが
まっすぐな眼で
地平線をみている
あそこにうすく立っているのが
ぼくらの鏡だよ
鏡はさみしいかい そんな
言葉は知らない
ぼくらはただここで
草を食み朽ちてゆくんだ

牛たちが静かにうなづいた
夕暮れには
しんみり寝床をつくる
川のせせらぎのもとで
今日を死に
明日に消える

みずいろの五月を
手のひらにのせ ぼくは魚のように
空に吸いついた

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