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元葬儀社社員が実際に体験した「理屈や科学でどうしても説明できない不思議なこと」3選 Part.2

 以前のことですが、葬儀社社員として働いていたときに体験した、理屈や科学で説明できないことを3つお話しました。

 実はこの「理屈や科学でどうしても説明できない不思議なこと」は、以前書いたことだけではありません。

 まだお話ししていない体験もあります。

 今回は、それをまた3つだけ、お話させていただきたいと思います。

 なお前回も申し上げましたが、僕はこの仕事でお化けや幽霊を見たことは1度もありません。


その1 49日までの足音

 仏教では7日ごとに行われる法要を「中陰」といいます。最近では7日ごとに行うのは大変ということもあり、省略したりまとめて行うことも増えてきました。故人が無事に極楽浄土へ行けるように、法要を行って供養をするのが、中陰の目的です。

 代表的なものとして「初七日法要」があります。現在でこそ、葬儀式の中で行われていますが、本来は葬儀が終わってから7日後に行われていました。

 その中で最も有名な法要が、49日の法要で「満中陰」ともいいます。

 あの世では死者の裁判が行われ、有名な閻魔大王など十王が、死後の行き先を決めると言われています。

 ではその間、故人はどこにいるのでしょう?

 なんと故人は、あの世とこの世の間を行ったり来たりしているといわれています。

 それを裏付けるかのような出来事を、僕は49日までの間に訪れた葬家に暮らす遺族の方から伺いました。

「ルトくん、信じられないことかもしれないけどね……実はね、夜の2時頃になると誰もいない廊下や部屋から、足音が聞こえてくるのよ」

 僕は泥棒を疑いましたが、遺族の方は否定しました。

「でもね、それが全然怖くないの。足音が聞こえると『あぁ、お父さんはまだここにいるんだな』って、すぐに分かるの。あの足音は泥棒とかじゃない。お父さんのものなんだって。寂しいときに聞こえてくると、ホッとするのよ」

 ある遺族の方は、僕にそう話してくれました。

 これは僕の祖母も、同じような体験をしています。

 15年近く前に、祖父が亡くなって葬儀を執り行いました。その後、49日までの間に、祖母は寝ている時に鈴の音を聞いたそうです。夢の中だけなら、単なる夢で片付けることができます。

 しかし、祖母が鈴の音に気づいて起きても、しばらくは鈴の音が確かに聞こえていたそうです。

 その時に「あぁ、おじいさんがお別れを告げに来たんだ」と祖母は感じたそうです。


その2 当直で感じた人の気配

 今は無くなりましたが、かつては「当直」が行われていました。

 当直とは、夜の間に葬儀依頼が入った際に、搬送車で迎えに行くために誰か1人が一晩、事務所に泊まり込むことです。

 依頼が入った場合、まずコールセンターに連絡が行きまして、コールセンターから当直専用の携帯電話に連絡が入ります。そして送られてきたFAXを確認して遺族の方に連絡し、お迎えに行きます。

 後に夜の搬送は、協力している下請け企業さんが行うようになり、実際に自分たちでお迎えにいくことはほとんど無くなりました。しかしそれでも、完全に移行するまでは事務所に泊まり込むことは避けられません。

 泊まるときは、宿直室に泊ります。ベッドとテーブルとテレビがあり、そこで一晩過ごせるようになっているのです。僕はそこにパソコンを持ちこんだりしながら、来るべき搬送に備えていました。

 そんな時に、妙な気配を感じることがありました。

 夜も更けてベッドに入って横になっていますと、外の廊下に人の気配を感じることがあるのです。

 それが夜の10時頃まででしたら、全然怖くありません。通夜があったりしますと、10時頃に帰ってくる先輩がいるため「あぁ、やっと帰ってきたんだ。お疲れ様だなぁ」と思ったりしました。

 事実、確認のために出ますと、先輩が書類の整理をしたり、帰り支度をしていることが多々ありました。

 しかしある時は、夜中の3時に人の気配を感じて目を覚ましました。

「まさか……侵入者がいる!?」

 変質者なら一大事だと思い、僕はアウトドア用の懐中電灯を手に、そっと廊下に出て確認しました。

 しかし、その時に人の気配は消えました。

 もちろん廊下を見回しても、誰もいません。事務所の中も確認しましたが、人の姿はどこにもありませんでした。

 事務所は2階にあり、建物の入り口から入るとすぐに階段があります。そして宿直室は、階段を登り、事務所に入る扉のすぐ向かい側にありました。誰かが入ってくると、すぐに分かってしまうのです。

 多分気のせいだと思い、ベッドに戻りました。

 そして後日、先輩数人も似た体験をしていたことを知りました。

「古い建物だから、何かがいてもおかしくない」

 ある先輩は、そう話していました。 


その3 謎の女性

 これも、当直での話です。

 当直で事務所にいた時に、最後まで残っていた上司がやっと帰りました。それからは自分だけになります。僕はそろそろ当直室に移動して、そこでゆっくりしようと思いながら、スマホでゲームをしていました。

 そのとき、業務用のケータイが鳴りました。電話を掛けてきたのは、さっき帰った上司でした。

 ケータイに出ますと、上司は信じられないことを口にしました。

「ルト、葬儀相談か何かで、女性が事務所を訪ねていないか?」

「えっ? いえ、誰も来ていませんが……?」

 僕は上司の話していることが分かりませんでした。

 上司が帰ってから、誰も訪ねてきていません。訪ねていたとしたら、建物のドアが開いた瞬間に音がするので、すぐに分かります。

「それならいいんだが、実はさっき、1人の女性が敷地内に入っていくのが見えた。変質者かもしれないから、戸締りは厳重にしておくようにな」

 上司はそう告げて、電話を切りました。

 変質者だったら、確かにヤバい。そう思った僕は、懐中電灯と事務所の鍵を手に、念のため見回りをすることにしました。

 事務所がある建物と、倉庫や車庫、式場の周囲を見回りました。

 しかし、どこにも女性は居ませんでした。

「上司の見間違えか……?」

 そう思いながら見回りを終え、事務所に戻ってきました。

 しかしその時、見回りをしていない場所を思い出しました。

 事務所がある建物の1階にある、女子トイレです!

「念のため、見ておこう……」

 薄気味悪さを感じつつ、僕は女子トイレもノックしたりして確認しました。

 しかしやっぱり、誰もいません。

 上司の勘違いだったんだなと思いながら戻りましたが、どこか腑に落ちませんでした。

 下手な冗談を言うような上司では無かったので、恐らく本当に見たのは間違いないと思います。

 だとしたら、その女性はどこに消えていったのか……?

 僕は気味の悪さを感じながら、当直を続けました。


 今回紹介した3選は、どれも僕が実際に体験したことばかりです。お化けや幽霊を見たことはありませんが、理屈や科学でどうしても説明できないことは、確かにあります。

 もしかしたら今もどこかの葬儀社で、同じような経験をしている人がいらっしゃるかもしれません。

 信じるか信じないかは、あなた次第です・・・!


 それではっ!

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