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【イベントレポート】健康づくりの仕組み化を目指して

11/5に開催されたイベント『管理栄養士も知らないオンライン未病予防栄養学』に参加させていただいた。このイベントの開催は今回でなんと277回目とのこと。その際に得た知見をここにつづる。


主催者紹介

今回のイベントの主催は花高凌さんと山本卓満さんのおふたり。

花高凌さん(以下花高さん)は株式会社WELL BE INDUSTRYの代表取締役CEOを務めてられてる。かつてiPS細胞を開発された山中伸弥教授の講演に感銘を受けたことをきっかけに大学院では大腸菌を用いたがんの基礎研究に取り組まれた。また2015年にお母様が乳がんによりお亡くなりになった際、現在の日本には健康教育のシステムが存在しないことを悔やみ、日本の健康づくりの基礎を構築するべく日々尽力されている。

株式会社WELL BE INDUSTRYの取締役COOを務めてられてる山本卓満さん(以下山本さん)はご自身について知識欲にあふれた人間であると称していた。そしてその知識欲が「人間とは何か」に向かった結果、健康について考えることこそが人間について考えること、といった結論に至ったそうだ。山本さん曰く「生活習慣病はその人の経験の積み重ねが引き金となるため、その人の人生病である」とのことだ。

新しい栄養学「分子栄養学」

まずは今回のイベントのテーマである「分子栄養学」の概要について講義していただいた。

そもそも栄養学は私たちに最も身近とされるカロリー栄養学から病域の領域で取り扱われる分子矯正医学、酵素栄養学、時間栄養学など細分化すると多岐にわたる。そのうち後者に含まれる分子栄養学とは「人間を分子レベルで取り扱った際、栄養がどのように作用しているのかを明らかにしている学問」だそうだ。言い換えると「私たち人間を構成する細胞一つ一つの中で栄養素がどのように働いているかを調べた学問」だ。そして医師などをはじめとする医療従事者は私たちの身体の中の生体メカニズム、すなわち代謝については学んではいるもののそれに関わる栄養素を把握していないことが多いそうだ。

例として取り上げられのは私たちの体内においてトリプトファン(アミノ酸の一種)がセロトニン(いわゆる幸せホルモン)となった後、最終的にはメラトニン(睡眠に関与するもの)が作られるまでの工程だ。この工程を円滑に進めるにはタンパク質、鉄、マグネシウムなど様々な栄養素を必要とする。従ってこれらの栄養素が十分に食事から補われないとメンタルの不調や寝つきが悪いなどといった症状が現れる。このように分子栄養学を学ぶことにより、日常における様々な疑問が明らかとなるのだ。

また分子栄養学を学ぶにあたり重要となるのは個人によって必要な栄養素の量が異なる、といった観点だ。例えば肌に良いとされるビタミンCについてある人は1日1,000mgで効果を実感できるかもしれないがある人には1,000mgでは足りないかもしれない。別の例として、コルチゾール(いわゆるストレスホルモン)が私たちの血液に存在する量は通常時であれば約20μg/dLだがストレス時にはこれが約10倍の量に跳ね上がる。このように栄養について考える際には個体差を考慮しなければならない。

現在は栄養学の中でも前述に登場した「カロリー栄養学」が主流となっている。カロリー栄養学とはその名の通りカロリー、言い換えれば車を動かすために必要なガソリンに主眼を置く学問だ。しかしいくらガソリンがあっても車本体がボロボロであれば運転することはできない、すなわち私たちの身体そのものが不健康であれば代謝は上手く回らないのだ。従って今後健康を追求する際には分子栄養学的な考えが主流になるかもしれない。

「健康を考える」とは明るい未来を描くこと

花高さんは「栄養学を学んでいると人の死生観について考えさせられる」と話されていた。どんな人間も例外なく「老衰」という決してあらがえない宿命を背負っている。そして死後、その身体は(日本においては)火葬され、残るのは骨というただの物質だ(花高さん曰く、「人間の身体は所詮入れ物」とのこと)。それでもなお、生きている限り健康について考えることは明るい未来を思い描くことに等しい

現在日本の社会保障費が大きく膨れ上がっているのは健康づくりのプロトコルが存在せず、多くの国民が「病院で医師に診てもらう」以外の選択肢が取れないためだ。また健康について考える際には1つの現象を多元的に見たり、問題の本質的な原因を探らなければいけない。そのため健康づくりは私たちの想像以上に難解なものであるのだ。

がん、糖尿病、認知症など長らく続けてきた生活習慣を要因とするこれらの病気を治療するためには生き方そのものを変えなければならない。しかし人間は残念ながら年齢を重ねるとともに生き方を変えることが困難となるのは言うまでもないだろう。これを踏まえ、健康づくりにおいては数値化や見える化によって未病の段階からアプローチする必要がある。そして人間は感情で動かされる生き物であるため、本人の「健康になろう」といった意識こそが大切なのだ。

身近にある栄養に関するQ&A

講義後の質疑応答にて挙げられた話題は以下の通り。

Q.コラーゲンを摂取しても結局アミノ酸に分解されてしまうため、意味がないのでは?
A.コラーゲンに再合成される可能性もあるため、一元に無意味とは言えない。

Q.身体に良いとされる油は?また酸化した油はどうして身体に悪いの?
A.一般的に良いとされるのはω-3系(抗酸化に関与)やω-9系(オリーブオイルなど)。また酸化した油は活性酸素を発生させる原因となる。この発生した活性酸素によりクエン酸回路などをはじめとする体内における反応は阻害される。

Q.東洋医学は現代の科学において適用される?
A.そもそも東洋医学は科学が発展していない時代に誕生した「経験」に基づく医学。そのため現代の科学に当てはめるのは無理がある。

Q.魚肉ソーセージなど添加物がたくさん含まれている食品は健康を考慮するなら食べないほうがいい?
A.一般的には摂取しないほうが良い、とは考えられているもののメーカーによるため一概には言えない。メーカーの商品開発における努力も考慮することが大切。

Q.サプリメントって結局効果はあるの?
A.サプリメントを摂取する際には「効果」より「目的」を考慮することが重要。「目的」によって求める「効果」が得られるであろうサプリメントの摂取量は異なる。

Q.四十肩を治す栄養素は?
A.そもそも栄養は万能薬ではない。けれど強いて挙げるならば、筋肉を緩めるために必要なコラーゲン、ビタミンC、マグネシウム、もしくは血流を良くするビタミンEとω-3系脂肪酸が考えられる。また四十肩は外的な要因により引き起こされる可能性が高い。

Q.動物性タンパク質と植物性タンパク質、どちらが身体に良い?
A.タンパク質を構成するアミノ酸そのものの質に差はないと考えられる。そのため脂質などタンパク質以外の要素に着目するべき。

Q.代謝が上がる栄養素は?
A.本質的にはビタミンB群が挙げられる。けれどL-カルニチンを摂取して運動を行うことにより汗の量が増加するため代謝が上がった感覚を得られるかもしれない。

Q.大豆タンパク質は身体に良い?それとも悪い?
A.大豆に限らず摂り過ぎは良くない。むしろ現代はボディービルダーですらタンパク質を摂り過ぎることは難しい。

まとめ

今回のイベントにて花高さんと山本さんは「活動の目的は分子栄養学を伝えることではなく、日本に健康づくりの仕組みを構築すること」と何度も訴えていらした。その活動の一環として現在株式会社WELL BE INDUSTRYは「未病のプロ」を増やすべく、「未病栄養コンサルタント実践養成講座」を提供されている。受講者の年齢層は高校3年生から82歳の方までと幅広い。またこの講座で得た知識をビジネスとしてより多くの方々へお伝えするためのサポートも受けられる。

このイベントに参加したころにより医療に従事する身であるにも関わらず、自分がいかに健康を軽視していたか痛感させられた。これを機に改めて健康について深く考え、今後の行動に反映させたいと思う。自分、そして大切な人たちの明るい未来を迎えるために。

最後に花高凌さん、山本卓満さん、このような貴重な機会をご提供していただき誠にありがとうございます。今回学ばせていただいた内容を糧に日々精進してまいります。

花高凌さんの著書
未病革命 新時代の健康づくり | 花高 凌 |本 | 通販 | Amazon

次回のイベント
【未病を学ぶ】管理栄養士も知らないオンライン未病予防栄養学 夜会 - https://peatix.com/event/4168638

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