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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年3月の記事一覧

「オートクチュール」技術の承継は、ちょっとした縁がきっかけというのは世界共通なのか?

久しぶりのフランス映画。フランス語のリズムで映画の雰囲気はガラリと変わる。ディオールを舞台に、オートクチュールの引退間際の女性と、彼女がひょんなことから出会った若いお針子の卵?の話。いろんな人生が交差し合い、未来が見えてくるラストは、なかなか美しかった。 広報のチラシや予告編からは、もっと派手目な高所得者の世界の映画化か?とも思ったが、実際は、オートクチュールの本質を支える「お針子」の話。未だ、「お針子」というその名の通り、その世界は、所得など関係ない、技術者の「気」が舞台

「ベルファスト」生まれた土地を離れる悲しみと家族の絆と…。

今日、開催されたアカデミー賞で脚本賞を受賞した映画である。確かにそういう点から見るとよく出来ているとは思う。舞台は1969年の北アイルランド最大の都市、ベルファストでの庶民の日常。歴史が揺れ動き、故郷を離れなければならなくなる家族を少年の目(監督の視線)を通して描く。それは、多くの人に少年時代を思い出させるし、人の優しさと悲しみがモノクロの画面にいっぱい詰まってる映画だ。アカデミー賞は「コーダあいのうた」に輝いたが、この映画が選ばれてもよかったと私は思う。 そう言ってしまう

「ナイトメア・アリー」1941年の古臭い教訓話。これを同じ時代の日本に置き換えても面白いですね

この題名、訳すと「悪夢の路地」というらしい。そのままの映画ですね。予告編を見た時には、単なる見世物小屋の映画かと思っていたので、情報なしに最後まで見て、この題名の意味を確認して、納得しました。 とはいえ、結構、古臭い、教訓物語ですよね。「嘘はつくな」「いい気になるな」ということなのだろう。これも、アカデミー作品賞候補である。それなりの映画の重厚感はあるが、どうも、現代の映画という感じがしない分は損な気がする。とはいえ、女たちが、主人公の男を潰していく感じは現代の女の強さを見

「ガンパウダー・ミルクシェイク」単純にドンパチが楽しめるアクション映画。気分的にはこう言うのがもっと欲しい私

「悪を蹴散らすシスター・ハードボイルドアクション」と言うキャッチに惹かれて劇場に。箱は大きくないが、結構お客さん入っていた。ポスターの雰囲気に惹かれてきたのだろうか?とにかく、私は予告編からも、ドンパチ映画が見たかった。そして、その想いは叶った!そう、A級感がない(B級と言われれば、そうなのだが、それよりは上の感じ)、まあ、話の設定など、どうでも良くって、シンプルに、悪者やっつけて気持ち良い映画であった。マーベルだDCだっていうような映画が、なんか偉そうに哲学的なものを持ち出

「ウェディング・ハイ」その題名通りにハイにならないのは、脚本の練り不足としか思えない

予告では、結構、面白そうだったのだ。脚本、バカリズム 監督、大九明子というのも、なんか魅せてくれそうな気がしたが、結果的には題名にある「ハイ」な感じに至らない。全ては、中に入っているギャグセンスの弱さと、構成の甘さが生んだ結果のように思われる。個人的には、そんなに好きではないが、三谷幸喜がこの題材で作ったら、もっと笑わせることはできるだろう。まあ、彼の映画も映画的な何かが色々欠けているものばかりなので、それを観させられても文句をいうとは思うが…。 (一応、この後、ネタバレい

「THE BATMAN〜ザ・バットマン〜」炙り出される現代のダークなリアルをうまくエンタメに嵌め込んだ傑作

初日のSNSの評価に傑作という文字が多く出ていた。なら、早く見ようと劇場に。何故、今バットマンなのか?広報で「ジョーカー」の映画を引用した宣伝がされていたが、確かに、ふたつの映画を並べてみれば、リアルな今の先進国共通の問題点みたいなものがよく見えてくる感じはする。2022年の今だからできるヒーローもの? 最後に主犯が「復讐」と言って散っていくが、この映画を見ていると、個人的に自分の過去にあった怨恨や許せない人々の顔が浮かび上がったりしてきた。そう、映像に込められた臭いは、過

「余命10年」このタイトル通りの映画で有り、それで客が入る映画というコンテンツの謎?

特に期待したわけではない。私はこういう映画を「病気もの」と呼ぶ。まあ、予告編を見て、それなりに何かあるのではと期待した部分もあったが、普通の病気ものだった。 今週は色々営業汚いじゃないか?と言われたTOHOシネマズ池袋の200人入る箱で日曜の昼間に見る。(ポイントが貯まっていたのでここで見る。つまり0円で見た)9割方、客が入っていたので、まあヒットと言っていいのだろう。とはいえ、今週は「ドラえもん」の新作があったりして、久しぶりにシネコンが賑わっているのを見た。暖かくなって