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「余命10年」このタイトル通りの映画で有り、それで客が入る映画というコンテンツの謎?
特に期待したわけではない。私はこういう映画を「病気もの」と呼ぶ。まあ、予告編を見て、それなりに何かあるのではと期待した部分もあったが、普通の病気ものだった。
今週は色々営業汚いじゃないか?と言われたTOHOシネマズ池袋の200人入る箱で日曜の昼間に見る。(ポイントが貯まっていたのでここで見る。つまり0円で見た)9割方、客が入っていたので、まあヒットと言っていいのだろう。とはいえ、今週は「ドラえもん」の新作があったりして、久しぶりにシネコンが賑わっているのを見た。暖かくなってきたのもあるのだろう。そう考えると、まだまだ感染は広がる気はする。映画館が閉まらないことだけはやめてほしい。
この病気の話は、実話をもとにしている。そして、原作は、亡くなった彼女が書いた「余命10年」だ。そういう意味では、あまり極端な脚色をしていい原作とは思わなかったのだと思う。監督、藤井道人、脚本、岡田惠和、渡邉真子という面々は、それなりに映像化スタッフとしては長けた三人だとは思うが、彼らにかかってもここ止まりかなと思ったりもした。全体に2時間の使い方もどうも、うまくない気がする。そして、フォーカスが小松菜奈一人にあるわけではないので、それがラストに向かう時に勢いを持たなくさせている感じ。そんなに、周囲で泣いている人も見かけず、そういう涙ものにはなっていないのは、計算通りなのか?そういう部分に対しても作り手のスタンスがいまいち見えないままに終わった感じがした。
映画としては、ベストセラーの小説があり、小松菜奈、坂口健太郎という主役を得たことで売るイメージは掴めたはず。小松菜奈の映画はほぼほぼ追いかけて映画館で見ているが、彼女自体にヒットさせる力はないのが現状。だが、病気ものという中で、儚いロマンスという軸があれば、彼女を見たいということはあるかもしれない。そう、私も、小松菜奈を見に行った様なものだ。その結果は、普通のでき。彼女が病気を隠して友人に対峙し、坂口に心を開く感じなのだが、どうも、彼女の強い思い的なものが今ひとつスクリーンから前のめりになってこない。まあ、どちらかといえば奥手な主人公なわけで仕方ないのか?でも、もう一つ彼女が輝く感じが欲しかった。小説を書くというところが彼女の最も生きているという世界なはずなのだが、そこの描き方も凡庸だったりする。そこをうまく描くことで、友人の奈緒が読んで泣いてくれるところに着地すればもっとラストの死が有期的に、いや涙腺突破につながった気もした。とにかくも、上部だけをなぞった感じに映画ができてしまっているのだと思う。もっと、人生の先のない感じとか、もっと、色々生きてみたい感じとか、人間の内面から爆発するような、言葉にならないもどかしさをもっと正直に出すような映画であっていいのではないか?
主人公2人が人間的に奥手なので、友人である奈緒と山田裕貴が良いサポートのなっていた。山田は、昨今はこういう役をやらせるとなかなか輝く。でも、この二人が付き合って最後に別れるとこもよくわからない。ここにも今時の青春像みたいなものがもっとちゃんと描かれる感じが見たかった。そういう意味では、坂口が焼き鳥屋を開くというラストも、うまく彼女の死に噛み合っていない。
テレビドラマの脚本を書かせたら、本当にうまくバランスを取ってくる岡田惠和も、どうも、2時間でこういう世界を描き切るのは難しいようだ。結局、キャラクターのどれにもシンクロできない感が最後まで私のイライラにつながっていたようだ。