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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年映画決算

とりあえず、今、映画館はそこそこの活気を取り戻している。日本の映画興行は、アニメに助けられている状況ではあるが、3年ぶりに途中に臨時閉館ということもなく、1年、映画館を開くことができたわけである。そんな中、シネコンはともかく、ミニシアターの営業自体はなかなかギリギリの状況の中で行われている状態は変わらないと思う。飯田橋ギンレイホールが、移転をするという前提ではあれ、閉館したことで、東京の名画座が、半世紀前と同じところに存在するのは、早稲田松竹くらいだと思われる。まあ、封切館で

「Dr.コトー診療所」離島の医師がスーパーマンである必要があるのか・・・?

何故、ここで映画版を作るのか?という疑問はあった。そして、映画は最終章を迎えるのかとさえ思わせながら、最後は皆が幸せな暮らしに戻っているというストーリー。そのラストの今ひとつわかりにく提示の仕方をどう捉えるかは、観客の意思に任された感はあるが・・。この興行が当たれば、映画でシリーズ存続というのも考えているのだろうかとも思う。 映画自体は、いくつかのドラマを合わせながら、なかなか感動的にDr.コトーの無理なワンオペ診療を感動的に見せていく。それにより、命の大切さ、人を思うこと

「月の満ち欠け」前世の記憶が残るということが必要なのか?と色々考える・・・。

年末、廣木隆一監督映画祭3本目。結果的には、3本とも飛び抜けた作品には出会えなかった感じだが、どれが一番好きか?と問われればこの映画ですかね?でも、魂の輪廻の失敗みたいな出来事であった、ファンタジーというよりは、オカルト的な雰囲気が強い感じではある。そして、こういう映画は受け入れられない人は、全くダメだろう。制作者が何を求めてこの佐藤正午の原作を映画化しようとしたのか、もう一つ掴み切らなかった感じはある。 初頭で大泉洋の家族の話が語られ、彼の妻の柴咲コウと娘が亡くなったとい

「ケイコ 目を澄まして」16mmフィルムに焼き付けられた画と空気感とそこから広がる世界への疑念。

この映画は16mmフィルムで撮られたそうだ。それなりに画質は粗いが、昨今のデジタル技術は、それを違和感なく映画館のスクリーンに映し出す。映画がフィルムのみで上映されていた時代は、16mmを35mmにブローアップして上映することはあったが、その画質は映画館で見るとやはり安っぽく映ったし、観ていて疲れた。まあ、今、16mmで撮ることに意味があるかどうかは置いておいて、その映像から醸し出す空気感はなかなか硬質であり、昭和の臭いのするものに仕上がっていた。 だいたいボクシングを主題

「ラーゲリより愛を込めて」何故今この題材かというよりは、今だからこの題材ということだろう。戦争は人を人でなくす行為だということ。

2022年は戦後77年目である。つまり、後期高齢者でも、戦争を知らない老人がいるということ。いや「戦争を知らない子どもたち」と歌っていた世代が「戦争を知らない老人」になったということだ。そう、戦争など知らない方がいい。世界に地球に戦争などという行為はいらないというのが、私のスタンスだが、ウクライナではまだ戦闘状態。日本も防衛費を倍にするとか言い出す始末。現首相はキチガイであると私は確定する。反撃するというのは、戦争を容認するということだ。全て、国会で議論もせず、閣議決定などと

「母性」女には、母と娘の2種類があるというところで唸るものが欲しかったですね

2022年末、廣木隆一映画祭(私はそう思っている)の2本目。湊かなえ原作の映画化。と考えると、少しシュールな感じの話、そして映画かと思った。予告編はそんな感じで作ってある。が、舞台が昭和なこともあるが。(これ、全然、映画の中で説明がないが、家に置いてあるテレビや、携帯が一切出てこないのでそうなのだ)どちらかというば、古臭い話を湊かなえ的に料理した小説なのだろう。戸田恵梨香と高畑淳子の関係など、昭和の嫁いじめドラマですものね。そこんところを監督がどのように料理するかが映画を見る

「ある男」戸籍を変えることで、人は違う人生を歩めるのか?

ラスト、一気に洒落ぽい世界に観客を放り込む。そして、最初にも出てくる、顔の映らない鏡の画が出てくる。これは、ある教訓の寓話のようなものなのだろう。そして、自分の人生を現在あまり素敵に感じていない人は、この映画を見てどう感じるか?という話である。 平野啓一郎原作の映画化。彼の文体のように、監督、石川慶は坦々と映像を紡ぎ重ねて行く。実際、形態としてはサスペンスの部類に入るのだとは思うが、主人公の父親が罪を犯しているだけで、出てくる主要人物はいたってまともな良識人である。だから、

「土を喰らう十二ヵ月」季節と食と生き死にと失恋と・・・。

ラスト近く、沢田研二に一緒に住もうと言われた松たか子は、「私結婚するの」と言って、食事もせずに去っていく。これは、沢田がフラれたということなのだろう。松がとてもワクワクした感じで車を沢田の家に運転するところから始まるこの映画は、12ヶ月経って、いや、実質は10ヶ月くらいか、その間にフラれてしまうという恋愛映画と考えるのが正しいのかもしれない。そう、日常には、こんな感じで小さなドラマが散らばっている。そして、それを彩るのは、食う寝る遊ぶでしかない。そんな映画である。 原案、水

「すずめの戸締り」災害と神とパラレルワールドで、何が描きたいのかがボヤッとしてますよね

新海誠の最高傑作なるキャッチを見たが、正直言って。あまり目新しさみたいのは感じなかった。新海誠が監督したとは関係なく、口コミで客が動く感じでもない。もちろん、ネット内の評価は好意的なものが多い。だいたい、2週間前からシネコンの半分くらいのスクリーンを占拠して上映してるわけで、それだけで凄いもの見えてくるわけで、そういうものに流されるのは日本人的な感じで私は好きではない。 「君の名は。」「天気の子」「すずめの戸締り」と続くこの3本を、観てない人にどんな映画かと尋ねられたら、私

「あちらにいる鬼」寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子、役者で見せる昭和の男女の混沌

荒井晴彦脚本、廣木隆一監督で、井上荒野原作の井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫関係を描いた小説を映画化する。なかなかゾクゾクするものがあるのと、すぐにシネコンのスクリーン減らされそうな予感から急いで見にいく。なかなか大人の映画に仕上がっていたが、荒井晴彦の粘着質みたいなものはあまり感じないわかりやすい映画であり、役者たちの芝居で映画の品格みたいなものができている良き映画であった。 しかし、これを作った廣木隆一監督、今年、この後に「母性」と「月の満ち欠け」という二作品が公開される。パ

「RRR」インド映画の底力的なものを堪能できる3時間

3時間ある映画なので、時間が合わないのと、体調も合わせなくてはいけないと思い、やっと観ることができた。インド映画史上最高の製作費7200万ドル(約97億円)をかけたというキャッチ。インド映画のお金に関する感覚はよくわからないが、プロレスとサーカスとミュージカルを一緒に見たような満腹感は流石のインド映画であった。そして、バックグランドにイギリス支配下からの解放の話もあるわけで、国威高揚的なものも強く感じさせる映画だ。 舞台は1920年。この間見た「アムステルダム」と似た時期の

「天間荘の三姉妹」死後の世界のファンタジー映画だが、今ひとつ世界観が浅い印象

髙橋ツトム原作のコミックを北村龍平監督が映画化。私的には内容はよくわからぬままに、のんの演技が見たくて観に行った感じ。話の舞台は「三瀬」と呼ばれる生と死の間の世界。いわゆる三途の川の事を三瀬の川とも言うらしい。そこに送られてきた、のんが今生に戻るまでの話。つまり、臨死体験をする話である。 この後は色々とネタバレになるので、これから観る方はお気をつけください。まずは、映画の尺が150分もある映画なのだが、120分で十分まとめられる題材の気がするので、脚本の引き算が全くできてな

「チケット・トゥ・パラダイス」こういう小気味良いアメリカンコメディがもっとあっていい。

なかなか、ラストの着地点で、タイトルの意味がシンクロして洒落た映画だった。このような、軽いタッチのハリウッドのコメディというのは昔はもっと公開されていた気はする。最近、洋画全般が大作の配給が多く、なかなかこういう作品に手が回らないというところかもしれない。そして、円安も手伝って興行的によほど自信がないと買い付けできないという流れもあるのかもしれない。 だいたい、これを観た11月11日は「すずめの戸締り」の初日ということで、シネコンのスクリーンの半分はその映画に提供しているわ

「窓辺にて」今泉力哉監督の恋愛感を題材にしたSF映画?

前作「猫は逃げた」は見逃したので、私的には今年初めての今泉力哉監督の映画。東京国際映画祭では観客賞を獲ったというから、結構エンタメ色が強いのかと思ったら、まあ、静かな会話劇だった。そしてカメラもほとんど動かない、フィックスで会話を捉えて、それを繋げて行く様は、小津安二郎的なものも彷彿させるが、小津ほど活劇にはなっていない。今泉流の静なる映画である。 だから「観客賞」というのは、どういう観客が選んだのだろうか?と考えてしまった。稲垣吾郎のファンだったら、まあそれなりに楽しめる