法の下に生きる人間〈第91日〉
毎年、受験シーズンになると、願書の提出締切に間に合わなかったとか、提出を失念していたとかいうニュースが流れる。
生徒ではなく、学校がである。
つい先日もそういうニュースがあったが、こういうことを未然に防ぐための対策が取られていたのかと疑問に思う。
しかし、そういった過失があった場合、当然のことながら損害賠償の話が出てくる。
私立学校の場合、教員は公務員ではないが、都道府県知事の所管とされている。
国公立の学校は、教育委員会の所管となり、各学校の教員は公務員である。
もし公務員に過失があった場合、損害賠償はどうなるだろうか。
私たち国民には馴染みがないと思うが、日本には『国家賠償法』という第6条までしかない短い法律があることは知っておいたほうが良いだろう。
以下、その全文を紹介しよう。
【第一条】
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
【第二条】
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。 2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
【第三条】
前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
【第四条】
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
【第五条】
国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
【第六条】
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
以上である。
第1条で分かるように、公務員が故意又は過失により損害を与えた場合は、国又は公共団体が賠償する責任がある。
ただし、公務員の過失が重大であれば、当の本人に対して国又は公共団体は求償権を有するのである。
例えば、学校のプールの水を止めるのを忘れて、過大な水道代の請求があった場合などが当てはまる。
第4条から第6条は補足的な規定になるが、第2条は、道路や河川など公共物についても触れている。
国道や県道、1級河川(=国土交通大臣の指定を受けたもの)や2級河川(=都道府県知事の指定を受けたもの)など、国や自治体が設置や管理をしているものも、瑕疵があったことにより損害を被った場合は、損害賠償が可能である。
続きは、明日である。