法の下に生きる人間〈第6日〉
通常国会が、先日閉会した。
主要法案が続々と可決した中で、私が一番注目した法律を、今週は5日間かけてみていきたい。
その法律は、「認知症基本法」である。
おそらく、私たち国民の誰もが、この法律に縛られて生活することになるだろう。
自分は認知症にならないとは誰も言い切れないと思うし、仮に自分がならなかったとしても、家族が認知症になる可能性はある。
そうすると、やはり認知症基本法のもとで、私たちはさまざまな保護や制約を受けることになる。
人によっては、プラス面もあればマイナス面もあるかもしれないが、それが法の下に生きる人間の宿命である。
さて、今日は、認知症基本法のオリエンテーションみたいな感じで、サクッと内容をチェックしていこう。
法律が苦手な人でもスッと入っていける条文から取り上げる。
まず、法律の構成であるが、次のように全33条から成っている。
【第一章】総則
(第一条から第十条まで)
【第二章】認知症施策推進基本計画等
(第十一条から第十三条まで)
【第三章】基本的施策
(第十四条から第二十三条まで)
【第四章】認知症施策推進本部
(第二十四条から第三十三条まで)
以上の条文のうち、第九条に、こんなことが書いてある。
(認知症の日及び認知症月間)
〈第九条〉
国民の間に広く認知症についての関心と理解を深めるため、認知症の日及び認知症月間を設ける。
2 認知症の日は九月二十一日とし、認知症月間は同月一日から同月三十日までとする。
3 国及び地方公共団体は、認知症の日においてその趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとするとともに、認知症月間においてその趣旨にふさわしい行事が実施されるよう奨励しなければならない。
以上である。
つまり、9月を認知症月間とし、9月21日を「認知症の日」と定めたのである。
9月は、「敬老の日」が第3月曜に祝日として定められているので、それと関連づけて決めたのであろう。
しかし、認知症の日に、その趣旨にふさわしい事業や行事が実施されるように、国と地方公共団体は奨励しなければならないのである。
何のために奨励を義務づけるのか。
4人に1人が認知症になる時代に、国民全体で認知症を肯定的に受け止め、みんなで支え合う機運を高めるためである。
うむ、その光景が目に浮かんだとき、何となくシュールに思えるのは、私だけだろうか。