唱歌の架け橋(第14回)

今日は、ちょっと聴き比べてみるとおもしろい歌をチョイスした。

今日紹介するのは、北原白秋作詞・山田耕筰作曲の『砂山』という歌なのだが、実は、作曲した人がもう1人いる。

中山晋平である。

山田耕筰が作った曲には、『この道』や『からたちの花』のように、子どもには少し歌いづらいものがある。

だが、中山晋平が作った曲は、子どもが生き生きと歌いやすい感じなのである。

今日はまずは歌詞を見て、この詩をあなたならどのようにフシをつけて歌うか考えてみてほしい。

【1番】
海は荒海(あらうみ)
向こうは佐渡よ
すずめ啼け啼け
もう日は暮れた
みんな呼べ呼べ
お星さま出たぞ
【2番】
暮れりゃ砂山
汐鳴りばかり
すずめちりぢり
また風荒れる
みんなちりぢり
もう誰も見えぬ
【3番】
かえろかえろよ
茱萸原(ぐみわら)わけて
すずめさよなら
さよならあした
海よさよなら
さよならあした

以上である。

では、今度はユーチューブで、アルト歌手の小川明子さんが山田耕筰作曲のものと、中山晋平作曲のものをそれぞれ歌っているので、聴き比べてみよう。「HiroandAkiko  砂山」で検索してみるとよい。

私は、中山晋平作曲のほうが好きである。

もともとこの歌は、北原白秋が新潟に行ったときに、日本海に浮かぶ佐渡島を見て着想を得たものであり、実は、1番の歌詞をよく見ると、芭蕉の俳句を想起させる3つのワードがある。

①荒海、②佐渡、③お星さまである。

芭蕉の俳句がパッと思い浮かんだ人は、素晴らしい。

荒海や    佐渡に横たふ    天の河

いかがだろうか。

北原白秋の作詞には、日が暮れたことやすずめまで登場しているのだが、これはどんな意図があってこうなっているのか、ちょっと理解が難しいかもしれない。

しかも、すずめは、1番から3番までの歌詞すべてに登場しているのだ。

中山晋平や山田耕筰は、おそらく北原白秋の意図をくみ取って作曲したと思うが、みなさんはどう捉えるだろうか。

ちなみに、中山晋平が1922年(=大正11年)、翌1923年に山田耕筰が作曲した。

どちらも4分の4拍子の曲である。

最後に、茱萸原という言葉を知っている人は少ないと思うが、茱萸というのは、グミの木である。

松原が、松の木が海岸に並んでいるエリアを指しているように、「ぐみわら」というのもあったのである。

昨日の「からたち」もそうだが、現代の私たちにとっては、昔ほど馴染みのないものになっているのがちょっと残念ではある。



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