【続編】歴史をたどるー小国の宿命(65)

綱吉が将軍に就任した年のちょうど500年前(1180年)、承久の乱で北条義時と対立したあの後鳥羽上皇がこの世に生まれた。

その後鳥羽上皇も、綱吉や新井白石と同様に学問好きであり、中でも和歌の才能は優れていた。

新古今和歌集には、その後鳥羽上皇が詠んだ和歌が収録されているが、そのひとつが下記のとおりである。

思ひ出づる    折りたく柴の    夕煙   
むせぶもうれし    忘れ形見に

勘の鋭い人は、この歌が、新井白石の著書『折たく柴の記』につながると気づいただろうか。

そのとおりである。

新井白石がどのような人物だったか、そして、彼の生きた時代にどんなことがあったかについては、この『折たく柴の記』を読むと分かる。

岩波文庫で1320円と少し高いが、現代語訳が付いていて、それだけを読んでも、生活のあれこれがよく分かるので、親近感がすぐに湧くだろう。

3連休の読書に、いかがだろうか。

6代将軍の徳川家宣と7代将軍の家継の時代の出来事が書かれているので、本シリーズでの解説は、『折りたく柴の記』に代えさせていただく。

ところで、後鳥羽上皇の和歌にある「折りたく柴」というのは、「折る」+「焚く」+「柴」をひとまとめにした言葉であり、柴を手折って焚き火の中で燃やしている情景を思い浮かべると分かりやすいだろう。

新井白石は、財政改革を行うにあたり、綱吉の治世に活躍した荻原重秀(おぎわらしげひで)と真っ向から対立した。

荻原重秀は、経済に関しては優秀な人物であり、彼の考え方は間違ってはいなかったのだが、新井白石はその才能に嫉妬したのか、荻原重秀の貨幣政策を批判し、6代将軍の家宣に、彼を解雇しないと自分は刺し違えて死ぬとまで言い放った。

結果的に、荻原重秀は追放されて最期は絶食による自害を遂げたといわれている。

『勘定奉行    荻原重秀の生涯』という集英社新書(770円)も出版されているので、岩波文庫の『折たく柴の記』と併せて読むとよいかもしれない。

そういうことで、いよいよ来週は、8代将軍の吉宗の登場である。

『暴れん坊将軍』のドラマでも愛された新さん、ここに見参である。





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