なぜ夜が怖いのか?
夜に部屋の電気をすべて消すと怖くて眠れないというのは、子どもに限らず、大人でもよく聞く話だ。
そういう人は、豆球だけを点灯させることで自分を安心させ、眠るのだという。
また、あまり早く寝すぎると、夜中に目が覚めてしまい、それはそれで落ち着かなくなることもある。
とにかく、夜が明けるまで安心ができないのである。
どうしようもない場合、睡眠薬を処方してもらって寝る人もいる。
たしかに、何も気にすることなく眠りに落ちることができるのでよいかもしれないが、リスクもある。
誰かに叩き起こされでもしない限り、自分ひとりでとっさの危険回避行動が取れないからである。
もし火事や地震が起こって逃げ遅れでもしたら、睡眠薬の服用を後悔することになるかもしれない。
人間の歴史を振り返れば、そもそも人間は、火の使用によって、夜を安心して過ごせるようになった。
それが、ろうそくなどを部屋の中で灯すなどして寝る時代になり、一応、昔の人も火事の防止のために火を消して眠ったのだけど、眠れない人はろうそくの不始末で危うく火災に巻き込まれそうになったこともあったのだろう。
誰かと一緒に寝たらいいじゃないかという人もいるが、一緒に横に寝る人がいても、その人がスヤスヤ寝ている状況で、自分だけが何かしら怯えている感じで眠れないというのは、経験したことがなければ分からない。
そして、その人が自分のために同じ部屋の灯りを点けたままで寝てくれることに申し訳なさを感じてしまうのである。
しかし、これが夜ではなくて、昼間だったら、部屋を暗くしてもたいていは安心して眠れるのである。
なぜ昼間だったら眠れるのか。
それは、ほとんどの人が街を出歩いていることと、ふだんの生活をしている(=生活音が聞こえてくる)ことで、安心できるからである。
みんながほとんど寝静まった夜に、車の走行音もたまにしか聞こえず、電車の音も人の声もしない。
その静寂さが、心細くて怖いのである。
だから、身寄りのない若者は、眠らない繁華街に繰り出し、ネオンの明るさに安心感を求め、ちょっとメンタル不安があるときは、自分と同じように出てきた人に対して仲間意識が芽生えるのかもしれない。
そうして、始発電車が走る頃になって夜が明けだしたら、朝の通勤ラッシュが始まる前に、さっさと家路に就き、そのまま布団の上で安心して眠るのだろう。
昼夜逆転の生活をしている人は、交代制の看護師だったり、夜間のコンビニバイトだったり、夜間工事の労働者だったりさまざまである。
ただ、そういった人たちの中に、夜が怖い人がいるのも事実なのである。