公務員の水際作戦
「こんなに働いても、給料はこれっぽっちしかもらえない」
ただでさえ不景気で給料が上がらない。
あがったとしても、その引き換えに責任は増大する
そして類を見ない物価高に、天引きされる社会保険料。
とはいえ、仕事を辞めることなんてできないし、その勇気もない。
新しい仕事ではそんな給料はもらえないかもしれないし、
そもそも仕事が見つかるかどうかもわからない。
特に1度貧困に陥ると、中々その状況から脱するのは難しい。
その人の経歴などにもよるのかもしれないとの留保はつくが。
とはいっても、貧困に陥る理由は様々である。
単純に働きたくない……という理由で仕事を辞めた。
ケガや病気で働けなくなった。
親の介護。
……などなど、その理由は人の数だけあるだろう。
また、私は必ずしもその状況を「悪い」と断じるつもりもない。
少なくとも現状の日本では特殊な例かもしれないが、
「あえて働かない」表現を変えるのであれば「必要な分だけ働く」
という生き方をしている方々を知っているからだ。
極端なことを言ってしまえば、生活において固定費(特に家賃)を
削ることができれば月数万円でも「生きていくこと」は可能だ。
そのようなライフスタイルを自ら選択している方々のうち何人かは
本を出版なさっているため、ご興味があればご一読いただきたい。
彼ら・彼女らの場合はその状況を受け入れている他、
その現状に対して(概ね)満足している。
このような場合においては、私は特に問題視はしない。
ライフスタイルは多様なのだから、好きなように生きればよいだろう。
問題はそうではない場合だ。
自分はその状況から脱したいにもかかわらず、それができない。
特にお金がない、あるいは仕事に就いても可処分所得が少ない……
といった具合だ。
そこに様々な事情があって働けない方の場合は、
色々とご苦労が多いだろう。
そのような方々は、ためらわずに福祉に頼っていただきたい。
福祉サービスに頼るのは国民の権利であり、恥ずかしいことではない。
最大限に活用すべきだろう。
しかし、特に生活保護をはじめとする福祉サービスを利用する際には
いくつかの「壁」が存在しているのも事実だ。
単純に周囲の目もあるかもしれない。
生活保護受給者への視線は必ずしも暖かいものばかりではないだろう。
とはいうものの、繰り返しになるが、
生活保護をはじめとする福祉サービスを受ける権利は国民全員にある。
必要な場合は無理をせずに、ためらわずに使うべきだ。
だが、生活保護の申請窓口で様々な理由をつけて申請させない。
いわゆる「水際作戦」というものが存在する。
過去に数回メディアでも取りあげられ、問題になっている。
以下に他サイトに掲載されている記事を例として提示させていただく。
これ以外にも類似する記事は複数存在している。
そのためインターネットで生活保護の申請について調べると
「生活支援のNPOのスタッフの方に一緒に来てもらう」
「共産党の議員についてきてもらう」
「内容証明郵便で申請書を窓口に送る」
など、様々なアドバイスが書き込まれている。
最初に断っておくが、
私は「すべての自治体でこのようなことを行われている」
と言いたいわけではない。
実は私自身も知り合いの生活保護の申請に付き添ったことがある。
その際は特になんの問題もなく、申請は受理された。
後日その友人は生活保護の受給が決定された。
とはいっても、インターネットにそれほどの情報が書かれており、
かつ、頻度は多くないかもしれないが、定期的に生活保護の申請が
意図的に妨げられるという情報はメディアに取り上げられるのも事実だ。
そもそも、なぜこのようなこと。
つまり「苦しいから福祉に頼りたい」というだけなのに
共産党の議員やNPOに頼らなくては福祉にたどり着けないのか。
そしてその「妨害」ともとれる行為が、
国民、ないしその市町村の市民に奉仕すべき公務員によって
行われるのだろうか。
「苦しいから助けて欲しい」
そのように意思表示をして助けてもらうことが、
なぜこんなに難しいのだろうか?
行政の側に立ってみると、生活保護の担当となる福祉課に配属される
職員は新規採用のスタッフがあてられるケースがあるときく。
なにかと勉強することが多いため「知識不足」という点は否めないのかもしれない。
また、これは行政だけではないが、スタッフそのものが慢性的な人手不足ということもあるのかもしれない。
ケースワーカーがそもそも足りずに、仕事で手一杯。
かつ、新人が担当することもあり知識不足。
このように擁護することもできなくはないだろう。
が、それが申請を諦めさせる理由にはならない。
さらに、意図的に生活保護の受給を断る理由として
「自治体の予算がない」「不正受給の防止」を唱える方もいる。
「不正受給」に関しては、
確かにそのような倫理に反することを行っている人々(あるいは団体)
がいるのは事実だろう。
が、そのような割合は全体でも極わずかという調査結果も存在する。
もちろん理想を言えば、この数字は0なことが望ましい。
しかし不正受給を防ぐということは、申請を希望する方に対して不適切な態度を取ることを肯定する理由にはならないだろう。
「自治体の予算がない」ということに関しても同様だ。
少なくとも窓口の職員が自己判断で予算を理由に申請を拒むような真似をしてよいはずがない。
ましてや、全体の奉仕者であり、身分が保証されている
自治体の職員がそんなことはしてはならないだろう。
そもそも生活保護をはじめとする福祉サービスは税金で賄われている。
もちろん市役所などに勤務する方々も「公務員」として、税金からその報酬をもらっている。
そしてその税金を払っているのは誰か?
国民全員である。
もちろん金額に違いはある。
金銭を稼いでいる方々は想像できないほどの金額を払っているだろうし、
反対に住民税などが非課税の方々もいるだろう。
それでも消費税などの間接税などを鑑みても、
国民は少なからず税金を払っているため公共サービスを受ける権利がある。
そしてその権利は、払っている金額には関係がない。
少なくとも税金をそんなに多く払っていない方々でも、
国が提供している福祉サービスは受けられるのだ。
そのような大前提があるのにもかかわらず、
税金から報酬をもらっている公務員が、
税金を払っている国民の権利をないがしろにしていいのだろうか?
よいはずがない。
断っておくが、
「こっちは税金払ってるんだぞ」などと言って、
役所の方々に怒鳴り散らし、無理難題やワガママ、
一般的に想定される行政サービスの範疇を超える要求をしていい
と言っているわけではない。
そんな愚かなことは控えるべきだし、相手とて人間。
基本的には相手を尊重した態度をとるべきだ。
ましてや意図的に生活保護の申請をさせない水際作戦は
どう考えても相談に来ている市民を尊重しているとは思えない。
そのような方には断固とした態度をとるべきであり、
必要であれば関係各所に抗議すべきだろう。
福祉サービスを受ける際には、受ける側は
多くの葛藤を抱くかもしれない。
特に誰にも迷惑をかけたくないと思う方も多いだろう。
それでも勇気をだして助けを求めた方に対して、
身分が保証された者が、様々な手を使ってそれを妨害する。
おかしいと思うのは私だけなのだろうか。
どの投稿でも似たような内容になってしまい申し訳ないのが、
いくらなんでも国民のことをないがしろにしているし、
相手を人間として尊重することを忘れているのではないだろうか。
ましてや国民に寄り添うことが必要とされ、
それを生業としている公務員がその態度を忘れるなど
あってはならないことだろう。
人を助けることに対し、もっと寛容な社会を目指すべきではないだろうか?