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短歌・自由律短歌

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2024年10月の記事一覧

連作三十首 火球と巻貝

階段を入り日はそよと流れ落ち床にゆらめく光の渚

霞立つ書斎へつづく鍵穴を覗けば夜の砂丘が展く

とおく焚火は白雨のうちより鳶を呼ぶ桟道歩むごとき随想

月光に蛙は掌をかざす骨の隧道透かし見るまで

火があった あなたの頬で揺れる穂へ手渡すだろう二三の巻貝

冷えきった砂原の底に置くときの琉金の鰭のつややかな水辺

――今晩は珊瑚の小指が降るでしょう。錆びない傘と祈りの準備を――

月を孕む淡い双

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