【読書ノート】『笑う月』
『笑う月』
安部公房著
夢は私たちの内なる世界への窓。
安部公房の『笑う月』は、夢が人間の創造性と自己理解にとって不可欠であることを描いている。夢は、日常生活の制約から解放された場所であり、新しいアイデアや洞察が生まれる源でもある。
①「夢」
自分の意識の外側から湧き出る情報やアイデアを受け取る場所であり、意識しない自由な状態での発想や想像が可能になる領域でもある。それゆえ、創造性や洞察力を高める手段として考えられる。夢の中での出来事やイメージは、意識の介在がないことで新たな視点やアイデアをもたらす。
夢は現実の光にさらされると色あせて変質する。夢からのインスピレーションやアイデアを逃さず、新鮮なうちに取り入れることで、創造性が、高められる。
②「笑う月」
月は古くから不変性や静けさを象徴する存在とされてきた。一方で、「笑う」という表現は動きや変化、喜びを連想させる。不変の月が笑うことで、永遠性と一時性、安定性と変動の相反する要素が融合することを意味する。
月は自然界の一部であり、人間の感情や表現と直接結びつけられることはない。それが「笑う」と表現されることで、自然と人間の世界が繋がり、共鳴する可能性を示唆している。人間の感情や行動が自然の一部として捉えられる視点も考えられる。
③「笑う月に追われる夢」
自己の恐れや過去のトラウマ、未解決の問題など、内的な恐怖や不安を象徴している。
夢の中で起こる非現実的な状況は、しばしば現実との比較や対比を通じて意味が付与される。笑う月や追いかけられる恐怖は、現実の日常とは異なる世界や状況に対する心理的な反応を表現している。
物語の主題は何か?
夢は、ひとの意識や存在の謎を解明する手がかりとなる可能性がある。 そして、新たなアイデアや洞察をもたらし、現実の制約から解放された状態で創造性や直感力を高める手段として機能するということ。