【読書ノート】『僕はジャングルに住みたい』
『僕はジャングルに住みたい』(つめたいよるに』より)
江國香織著
「僕」は、小学6年生で、反抗期の真っ盛り、機嫌が悪くなると、ジャングルに住みたいと思ったりしていた。
「僕」は、野村さんに秘めた想いがあるのだけど、うまく立ち振る舞うことができない。
そして、野村さんと二人でジャングルの中で仲良く暮らすという妄想の世界に入っていく。
トン汁の嫌いな野村さんには、大量のトン汁を入れて、困らせて、その上で、「僕」を気にかけてくれていることに、実は心が躍っている。
『僕』は野村さんが、下駄箱にそっとサイン帳を入れてくれたことをこころから、喜んでいる。
何を書いたら良いのか、考えるのだった。
「僕」のサイン帳にも野村さんの言葉が欲しい。
「俺たちに明日はない」(「僕」が、野村さんのサイン帳に書いたことば)
一般的に無常さや不確実性を表し、生命の一時性や未来の不確実性を示唆する。「僕」の心のうちの逆の言葉を書いてしまう。
そんな「僕」の言葉を喜んでくれている野村さんに「僕」は、どんどん惹かれていく。
樋口一葉の『たけくらべ』を思い出した。
シンプルな物語だけど、ことばのひとつひとつが、キレが、よくて、心地よい。