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【読書ノート】『ミツザワ書店』(『さがしもの』より)
『ミツザワ書店』(『さがしもの』より)
角田光代著
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主人公(ぼく)は、サラリーマン作家。ある文学賞に作品を応募したら、選考で選ばれたところから物語は始まる。
受賞時のインタビューの時、受賞の喜びを誰に伝えたいかという質問に、本当は、ミツザワ書店の店主とこたえたかったのだけど、無難に両親と言ってしまった。
ミツザワ書店は、高齢のおばあさんが、一人でやっている田舎の本屋だ。様々な本が無造作に積み重ねられているので、欲しい本はおばあさんに尋ねる。新刊や雑誌でない限り、目当ての本をすぐに取り出してくる。
田舎に住んでいた(ぼく)にとって、本への接点はミツザワ書店だった。(ぼく)が、小説を書こうと思った原点は、ミツザワ書店にあると内心思っていた。
本を読むと、書かれた世界観を経験することができる。本を通していろいろなところに行って、いろいろな人と出逢うことができる。読めば読んだだけ、自分の頭の中に、物語の世界が、混沌と存在することになる。
ミツザワ書店の混沌状態は、店主のおばあさんの頭の中そのものなのだということ。
物語の主題は何か?
本を通じて人間は、成長するということ。本を読むことによって、ミツザワ書店の混沌状態か、店主のおばあさんの頭の中のようであるように、本の読者は一つ一つの物語の塊が、頭の中に混沌と積み重ねられていく、それは、ミツザワ書店の混沌状態が、店主のおばあさんの頭の中そのものであること同じなのだということ。