【読書ノート】『すいかの匂い』
『すいかの匂い』
江國香織著
主人公(わたし)が、9歳の夏休みに、母の出産のために東京の羽村町に住む叔母夫婦の家に預けられたところから物語は始まる。
わたしは、早くもホームシックになって、叔母の家の引き出しからお金を拝借して、家出をしたところ、迷子になり、見知らぬ町を彷徨うことになった。途方に暮れていた時、一軒の家で少年たちの声が、聞こえたので、その家に近づいてみた。そして、驚くべき事象を目の当たりにする。
キーワードを挙げてみる。
①結合双生児
同じ身体を共有しつつも、異なる独自のアイデンティティを持つことがある。哲学的に考えると、これは一つの生命体としての統合と、同時に異なる個体としての個別性が入り混じり、他者との関係が個体の形成に与える影響が複雑で多様であることを示唆している。言い換えれば、結合性双生児を通じて、個体と他者との結びつきがどれほど入り組んでいるか、他者との関わりが個体の形成にどんな影響を与えるのかを考えることができる。
②スイカ
花言葉は「愛の証」や「無垢な心」など。また、スイカは夏の風物詩で、暑い夏に食べると疲労回復につながる甘くて美味しい野菜(果物).
③アリ
多数が一緒に働きながら生活することから、協力、勤勉、繁栄、団結などを象徴している生き物。¹²³. アメリカ先住民の間では、蟻は「協調性のある働き者」の象徴とされている. シャーマンの間では、蟻は「忍耐強く信じた先に得る幸運」の象徴。
④「ルンペン」
ドイツ語で「ぼろ」という意味の言葉。日本では、浮浪者やホームレスのことを指す言葉として使われていた。この言葉は、カール・マルクスが使用した「ルンペンプロレタリアート」という言葉から派生したもので、仕事もせず、家もなく、ふらふらしている、極めて貧しい人々のことを指している。ただし、現在では「ルンペン」という言葉は差別用語とされ、特にメディアでは放送禁止用語となっている。
キーワードから見えてくること。
わたしが、不思議な家で出逢った双子(ひろしくんとみのりくん)は、身体がくっついた結合双生児だった。結合双生児は、近い将来、手術で切り離される予定になっていた。その姿に親から切り離されつつある自分の姿を感じたと思わされた。不思議な家の母親は、すいかを振る舞ってくれた。
すいかにはアリが集っていたのだけどひろしくんとみのりくんは、アリがついたまま、すいかを食べるのだった。後でわかることなのだけど、その一家は、空き家に不法滞在していたものたちだったらしい。
物語の主題は何か?
ひととしての自立の始まりの瞬間がテーマなのだと思った。
親が自分のそばからいなくなった時、はじめて、子供は自分が一個の独立した人間であることに気づく。
私自身、小学1年生の二学期から四国の田舎の祖父母のもとに1年あずけられたことがある。母親が持病を再発させてしまい、手術を受けることになったためなのだけどね。羽田から飛行機で飛び立つ時、涙が流れていたことを思い出す。転んで擦りむいた訳ではないのに、何で泣いているのだろうと思っていたことを思い出した。
四国での時間はあまり覚えていない。人間は、辛いことは忘れる様にできているのかもしれないと思ったりした。
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