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【読書ノート】『小さきものへ』

『小さきものへ』
有島武郎著


作者自身が物語のモデルらしい。
母親(主人公の妻)が、結核になって、幼子を残して、隔離され、死んで行くのだけど、子供たち3人は、母親が死んだことを知らせないどころか、葬式にも出させない。

そんな子供たちに向けて、父親が、
メッセージを残す形の物語となっている。

物語の締めくくりに以下のことばが綴られる。

"小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
 行け。勇んで。小さき者よ。"

美しく、胸が締め付けられるような物語だと思った。

当の有島武郎も不運な無理心中でなくなってしまうのだけど。
不倫の末の無理心中と聞くと、人間性を疑いたくなってしまうが、
それほど、ひどい話でもないようだ。女性の方に、離婚する権利が認められなかった時代、やむを得ず、死を選択したらしい。

一度はクリスチャンになっていたのに、離れてしまっていたというのが、残念だなあと思ったりした。

自分だったらどうしただろう?
子供達とも、悲しみを共有するのではないかなあと思った。みんなで悲しんで、みんなで立ち直っていくことなのではないかなあ。

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