【読書ノート】『愛の適量』(『スモールワールズ』より)
『愛の適量』(『スモールワールズ』より)
一穂ミチ著
主人公はバツイチの高校教師(慎悟)。元々情熱的な教師だった慎悟。文字通り、全てを捧げて、生徒たちに愛情を注いでいたのだった。ところが、ある事件をきっかけに、自分が注いでいた愛情は、むしろ、生徒にとってはありがた迷惑なものでしかなかったということが、わかり、離婚もして、幼い娘とも離れ離れに暮らしていた。
時が過ぎて、娘(佳澄)が、息子のようなイデタチで戻ってきた。
タイに行って、トランスジェンダーの手術を受けるのだという。
キーワードを挙げてみる。
①とりかへばや物語
平安時代の日本の文学作品で、作者は不明、約10世紀に成立したとされている。この物語は、男女の身分を入れ替えるというユニークな設定を持ち、特に兄妹の間の愛情や葛藤が、描かれている。
物語は、兄妹それぞれが、異性として生きることを望む。兄は妹の姿を借りて女性として生活し、妹は兄の姿を借りて男性として生活する。
②適量
物事のバランスや調和を象徴する。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「中庸」を重視し、極端を避けることが美徳であると説いた。
③愛
哲学的な視点では、愛は知識や成長、関係性に関連づけられ、個人の感情や体験に基づく多様性が強調される。一方、キリスト教の視点では、愛は神の本質であり、隣人を思いやる無条件の行動として理解される。
物語の主題は何か?
親が子供を思う愛の適量は、中庸を保ちながら、子供の自己実現を支援すること、条件付きと無条件の愛のバランスを取ること、そして感情的な知性を持つことが重要だということなのだと理解した。
愛情をかけることは、得てして、自己満足に結びつきやすいものなのだと思う。完全な愛というのは、人間には難しいのだと思ったりした。
「自分の子ども」というのは、ついつい自分のもののように考えてしまうもので、子どものためだと言いながら、自分に都合よく子どもを導こうとしてしまうもので、そのさじ加減は難しいなあと思ったりする。
適量の愛というのが、良い加減なのかもしれないと理解した。
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