『アイロンのある風景』(『神の子どもたちはみな踊る』より)
『アイロンのある風景』(『神の子どもたちはみな踊る』より)
村上春樹著
物語は、神戸南部地震の1ヶ月後の1995年2月の或る日の深夜、三宅さん、順子、啓介の3人が、砂浜で焚き火をするという話。
家出をして茨城県の海辺の小さな街で暮らしている順子。
妻と子どもを神戸に残し、5年前からこの街で暮らしている画家の三宅さん。
順子の恋人啓介。水戸の老舗和菓子店の息子。家は継がないと強がる大学生。
なかなか、哲学的で、一読したくらいでは、よくわからない話。
キーワードは、『焚き火』、『流木』、『冷蔵庫』と『アイロン』。
焚き火の意味すること。
①暖かさや光、コミュニケーションと絆。
②炎は変化や浄化、再生。
③人々が集まり、共有することの重要性や、人間の原初的な営みを示唆する。
流木の意味すること。
①自然の力や変化、持続性と適応力を象徴する。
②過去からの持続や新しい目的への変容、流れや旅立ちの意味を持つ。③人生の不確実性やサバイバル能力、強さを示唆する。
冷蔵庫の意味すること。
①保存・維持、資源の管理、および自己制御。
②日常生活の維持や、消費と供給のバランス、そして準備と計画の重要性。
③人間の技術的進歩と生活の向上。
アイロンの意味すること。
①秩序や整理、努力による変化。
②自己改善や外見への配慮、社会的期待への適応。
③日常的な労働を通じた継続的な努力や、自己維持の重要性。
三宅さんは、何らかの理由で家族を捨てて、5年前から彷徨う人生をスタートさせて、海岸で流木を集めて焚き火をする。そして、流木を求めて神戸から茨城にたどり着いた。おそらく、阪神大震災で家族を失ってしまった。それが、三宅さんが、よく見る、冷蔵庫の悪夢なのだろう。
それぞれに理由があって、家族と距離をおく順子と啓介は、焚き火に惹かれて、三宅さんのもとに集まってくる。順子は、三宅さんの作品のことを訊ねると、三宅さんは、直近の作品は、『アイロンのある風景』だと語る。
人生で直面するそれぞれの不合理を経て、流木を求めて、3人が集められて、焚き火を通して、共有しながら、自分の人生にアイロンを掛けてリセットしようということなのだろうなあと思ったりした。
イノセントマン